裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

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蛭子

Category:山岸凉子

蛭子(ひるこ)
1985年

笛吹き童子(プリンセスコミックス)』(秋田書店)
自選作品集 月読(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
山岸凉子スペシャルセレクション〈2〉汐の声』(潮出版社)
に収録。



「お姉さん お金貸してくれない」

一人暮らしを始めた女子大生・里見は、ひょんなことから遠縁の美少年・春洋(はるみ)に懐かれる。
しょっちゅう遊びに来るようになった春洋を、初めは弟のように可愛く思っていた里見だが、春洋が部屋に来るたびにおかしなことが起きるようになり…。


実はこの作品、ずっと意味がよくわかってなくて「何だかよくわからないけど気味の悪い話」という印象だったのですが、
(結局どゆこと? 春洋くんは何が目的なの? 春洋は二人いるの同一人物なの?)
他の人の感想をいろいろ読んだ結果、「恐ろしいサイコパスに狙われた女子大生」という話でいいみたいですよ。
サイコパスというものが認知されはじめた頃なのかな? でも春洋の行動が謎すぎてやっぱりちょっとわかりにくい。

比喩に時代を感じる「風・木のような美少年」春洋くん(中1)は、なぜか里見に懐く。
やがて金をせびりだす春洋くん。いじめっ子に金を取られるんだと涙をこぼす春洋に同情してお金を渡していた里見ですが、春洋が来るたびに部屋にしまってあったお金がなくなっていくのに気づきます。
怪しんだ里見は春洋に少し冷たく「お金返してくれるの」と聞きますが、ヘラヘラしながら「ごめんお願い2万円だけ貸して」と言う春洋。いい加減にしろと言ったら今度は泣き落とし。
この春洋の目的(金)さえ達成できれば何でもいいや感。これがサイコか。

しかし春洋くんは何がしたいのかわからんな。家はお金持ちなんだから、貧乏学生の里見からお金を取るのも真の目的ではない?
この「金持ちなのに金をせびる」という謎の行動のせいで私は最初に読んだ時「この春洋は最初に会った春洋とは別人なの??」とかいろいろ混乱してしまいました…。
ただ単にお人好しから金取って虐めて楽しみたいだけなのかな。サイコパスの怖さってそういうところだと思います。思考回路がもう怖い。


そして始まるサイコストーカー地獄。ピンポン攻撃! 玄関先に猫の死体! ケーキぶちまけ!
「お姉さん 好きなケーキ持ってきたよ 入れて」
この作品で一番怖い1コマ。
見た目は美少年なのに、こいつ歪んでるな…というのがよくわかる気持ち悪い目つき。素晴らしいです。
昔うちの近所に住んでた危ない人もこういう目つきをしていたなぁ…。

恐怖のどん底の里見はとうとう春洋の家に事実を説明しに行きますが…、里見はサイコパスの北島マヤ並の演技力をなめていた。
春洋くんは家では超いい子だし学校でも優等生で人望も厚いクラス委員様! 春洋に隙はなかった。納豆も嫌いなのだった。
圧倒的な信頼のある春洋、嘘つき女みたいな目で見られる里見。

絶望して帰宅した里見ですが。
あれ? ペットの金魚が死んでる…。鍵は閉めてたはずなのに…。
終わり方が怖い。
学校では春洋くん当然猫かぶってるんだろうけど、影で里見みたいにすっごい虐められてる子がいると思う…。


でも里見ちゃん、ターゲットにされたのは不運だけど、実際はサイコパスと出会ってすぐに「危ない奴だ、私はこいつに狙われている」って気づけること自体はかなりラッキーなことなんだよなぁ…と思いました。
私も里見ちゃんと似たような経験がありますが、凄腕のサイコパスにターゲットにされると、いつの間にか見事にマインドコントロールされて、里見ちゃんみたいに正常な判断はできなくなるんです。
(場合によっては「サイコさんは被害者、加害者は自分」と思い込まされて死ぬまで搾取され続けることも…)
なので実際のサイコパスは、こんなわかりやすいホラーにはならないかも知れません。何せ自分が被害者だということにすらに気づけなくなるんだから…。

この作品にひとつ言わせていただくなら、個人的に山岸先生の描く「怖い美少女」がすごく好きなので(虹子ちゃんとか夏夜ちゃんとか八重子ちゃんとか)、春洋くんは男の子より女の子の方がよかったなー。
こういうサイコさんは男だとなぜかあんまり凄みが出ない気がする…。
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キルケー

Category:山岸凉子

キルケー
1979年

天人唐草(サンコミックス)』(朝日ソノラマ)
山岸凉子作品集〈7〉傑作集1 スピンクス』(白泉社)
山岸凉子全集〈24〉パニュキス(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
山岸凉子恐怖選〈1〉鬼来迎(ハロウィン少女コミック館)』(朝日ソノラマ)
自選作品集 夜叉御前(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
パイド・パイパー(MF文庫)』(メディアファクトリー)
に収録。



「おまえ ココアを飲まなかったのね 飲まなかったのね」

中学生の奈津子、広、隆、進、小学生の道子。5人は山でのハイキングの帰り、バスに乗り損ね、山中を彷徨っていた。
日も暮れ弱気になっていた頃、5人は山の奥に家の灯りを見つけ、助けを求める。
その館に住んでいたのは大量の動物たちを飼う、妖艶な美女だった。


神話上の魔女「キルケー」を題材としたお話。元ネタはギリシャ神話なのに着物姿に切れ長目のキルケー。新鮮!
この作品は比較的シンプルな恐怖ものという印象があります。原始的恐怖「取って喰われる」にだいぶ近いというか。
仲良し5人組の中で一人だけ性格悪い子がいたので、「この子が最初の犠牲者なんだろうなぁ…(´ー`)」と思ったら案の定だよ! なんかホラー映画とか探偵もの的なテイスト。

キルケーさんの能力(?)は「人間を動物に変身させる」という、どこにでも出てきそうな単純なものなのですが、「人間の意識を保ったまま動物になる」ってよく考えたらすごくイヤだよなぁ…と思わせてくれます。主人公の奈津子一人だけ、好き嫌いが多いおかげで助かるんですが、すでに動物に変えられてしまった仲間たちが奈津子に寄ってきて、(逃げろ、逃げろ)と必死で示す…。うっわぁ…。
それを信じようとしない奈津子に置いて行かれた4匹(4人)の1コマが何気にめっちゃ切ないです…。ねこ…かわいいけど…。
微妙にしゃべれるオウムを採用してしまったのはキルケーさんの油断。きっと。

「逃げろ クェ 逃げろ」
「さっきのあの声 なんだか広くんの声に似ていた」

5人が館を見つけた時に吠えまくってた「番犬」たちも、多分犠牲者(元人間)なんだろうなぁ…。最初5人を逃がしてやりたい一心で吠えてくれてたのかと思うと切ない。『ねむれる森の…』とかでもそうでしたけど、言葉が通じない・意思の疎通ができない系は個人的にはかなりの恐怖です。ジョジョ5部のトーキングヘッズとかすげーヤだったなぁ…。

キルケーさんは魔女(?)なのに魔術とかじゃなくて、ポタージュとかココアとか何か飲ませないと動物にできないってのが微妙に怖さ半減してる気がしないでもないなぁ…と思ったんですが、元ネタも同じでした。じゃあしょうがないか。まあ魔女って本来修行した人間の女だからね…。奈っちゃんは私と同じでこってり系の飲み物が飲めない人と思われ。
ところで誰もつっこんでないけど、キルケーさん場面によって身長でかすぎだよ…。登場シーンで2m、隆くんを襲う前のシーンなんか4mくらいあるじゃないですか…。バランス的におかしいけど「でかい」というのはやっぱ単純に怖いですね!

雨女

Category:山岸凉子

雨女
1994年

押し入れ(AmieKC)』(講談社)
押し入れ(KCデラックス)』(講談社)※上の復刻
に収録。



「お母さん あのおじさん 長い物を引きずってるよ」

三田数良はその恵まれたルックスで数々の女を物にし、金目的で手にかけてきた。女たちの愛と怨念に取り憑かれることになるとも知らずに…。


主人公の女性はおそらくジェイン・ドゥさんこと千鶴子さん(作中では名前が出てきません)。自分が数良に殺されたことに気づかず、数良を見つめ続ける。
この千鶴子さん、ところどころのコマでさりげなーく首に布が巻き付けられています。山岸先生ってたまにこういうことしますよね。『汐の声』のロングのシーンの床のアレとか。あれはびびった…。
この作品は出てくる幽霊二人とも自分が死んだ自覚なしで勝手に動いてて変なかんじ。

三人目の女・よし子も殺してしまう数良。でもマスコミに対しては涙で応答してみせます。演技派です。一方その頃、千鶴子の遺体が発見されます。
今まで視点キャラだった千鶴子が一瞬で「ゴミ袋に詰められた死体」になったシーンはけっこう怖かった…。なんかね、「人を脅す気のない幽霊」って怖い…。黒いゴミ袋の中で正座ですよ?
冒頭の「立てない!?」のシーンの変な外枠はゴミ袋だったんですね…。あの頭をつかえてつんのめった体勢の意味がここでようやくわかるという。

マスコミに囲まれながら帰宅する数良。数良のうしろから「長い物」が繋がっていることに、近所に住む少女だけが気づく。

罪が暴かれようと暴かれなかろうと
彼は“長物”を引きずっている
これが人間に憑く背後霊の中でも もっともたちの悪いものだそうな


さて、「三田数良」の元ネタこと三浦和義は2008年に留置所で首を吊った状態で死んだわけですが、自殺であれ他殺であれ事故であれ、「長い物」が首にグルグル巻き付いて死んだ…と考えると何だか辻褄が合ってて恐ろしいですね!(首つりに使われたのはTシャツらしいけど)
前にテレビかなんかで見た霊能力者も「三浦和義には女の長い髪の毛がグルグルまとわりついている」的なことを言ってたし。怖いよー。

でもこのマンガに出てくる三人の女の霊は「呪ってやる!」という恨みの気持ちは描写されておらず、自分が死んだことすら気づかず、ただ数良の後にズルズルついて行くだけの存在なんです。単なる恨みの感情より、こういう「愛だか怨念だかもうよくわからない強い執念」ってのが一番怖いと思うのです。

あやかしの館

Category:山岸凉子

あやかしの館
1981年

『あやかしの館』(プチ・コミックス)
山岸凉子作品集〈10〉傑作集4 夏の寓話』(白泉社)
山岸凉子全集〈17〉ゆうれい談(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
山岸凉子恐怖選〈4〉汐の声(ハロウィン少女コミック館)』(朝日ソノラマ)
山岸凉子スペシャルセレクション〈10〉ヤマトタケル』(潮出版社)
に収録。



「だれかいるんですよね」

は高校に通うために、叔母の由布子の家に居候することになった。
浮世離れした由布子の性格にも慣れてきた頃、葵はその家で起こる奇妙な現象に気づく。


この後『二口女』(由良子さん&縁ちゃん)『ケサラン・パサラン』(由良子さん&紫苑ちゃん)と続く「気持ちだけは異常に若いイラストレーターのおばさん&寒色系の名前の女の子」という二人が出てくる作品群の一番最初の作品です。
その中で一番どうかしている由布子さんは、なんか微妙に失敗した洋館に住んでいましたが、その家は変なことばかり起きます。怯える葵ちゃんですが、由布子さんは「えーでもしょうがないじゃない」みたいな反応で終わらせてしまいます。肝が据わっているというか図太いというか。

この話に出てくる由布子さんの「あやかしの館」は山岸先生が当時住んでいた家をモデルにしただけあって、葵ちゃんの恐怖体験が妙にリアルで怖いです。家電が信じられないくらい故障する。ドアも開いてないのにドアの開く音。玄関ドアの覗き穴から見える、金色の光をひいて歩く透き通った人…。
最後はギャグで終わらせてくれてるのがありがたいですが、やっぱり怖い。「寝てると近づいてくる誰かの足音と吐息」が一番イヤですね。でも金色の帯はちょっと見てみたいかも?

「おかしいと思ってたのよね この家。
とくに玄関がよ。信じて ね! 由布子さん」

「だからって どうしようもないではありませんか」

葵ちゃんとはまた違うクールツッコミの家政婦・寒川さんには理由がわかってました。

「お玄関が表鬼門なんですよ この家。
古いことをいうとお思いでしょう。
でも玄関が鬼門じゃ 何かが通ってもあたりまえなんですよ」


『山岸凉子全集〈17〉』の巻末には山岸先生のインタビュー記事「山岸凉子の幽霊譚」が載っていて、『あやかしの館』に出てくる不思議エピソードは全部、山岸先生が自分の家で実際に体験したことだと語っています。す、すごいな…。このインタビューの時はすでに「鬼門」の玄関は改装されていたらしい。
「玄関に貼ったお札だけがはがれるんですよ」
「鬼門を閉じたら精神は平穏になったけど、仕事は鬼門が開いてた時の方が調子が良かった」という話も出てて、悪いことばかりじゃないとこが逆にそれっぽくて面白い。お手伝いの寒川さんの名前の元ネタは寒川神社か…。

私はというと、家相とか鬼門とかあんまり信じてないんですけど、『ケサランパサラン』にもちらっと出てきた「方違え」ってやつはちょっと信じてるんです。何故かというと↓

昔、私が子供だった頃、両親が「田舎の一軒家に住みたいわ」というありがちな願望を抱いたため私たち家族は同県のわりと田舎の方の市に家を借りて引っ越したんですね。
母はたまたま機会があって視てもらった占い師から「今の時期にその方向へ引っ越すのは良くない」と言われたらしいのですが、あまり気にせずその田舎町で新生活をスタートしたんです。
しかし憧れの田舎ライフは想像と違い過酷でした。私たち家族は近所の人々からよそ者扱いされ、私は転校先の小学校がなんか軍隊か刑務所みたいな学校で、(校舎は高い塀で囲まれて生徒が逃亡できないようになっていた)担任教師にいじめられ不登校→引きこもりになってしまい、家族全員心身共に疲労し、たった1年で元住んでいた町の2DKのアパートに逃げ帰ってしまった、という苦い経験があるのです…。
占いの結果とそれとは偶然かも知れませんが、あの頃の生活があまりに強烈に酷かったので信じざるを得ないというか…。うちの両親は今でもたまにあの頃を思い出して言います。「あの占いは当たってた」と。
そういえばあの田舎で借りてた家もよく幽霊出てたなー。だから家賃格安だったのかな。

千引きの石

Category:山岸凉子

千引きの石(ちびきのいわ)
1984年

鏡よ鏡…(ぶーけコミックス ワイド版)』(集英社)
山岸凉子恐怖選〈3〉千引きの石(ハロウィン少女コミック館)』(朝日ソノラマ)
自選作品集 わたしの人形は良い人形(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
山岸凉子スペシャルセレクション〈6〉夏の寓話』(潮出版社)
に収録。



「戦争中 空襲にあってケガ人をあの体育館に運んだらしいよ」

中学2年の可南子は両院の離婚によりN市の学校へ転校してきた。
しかし学校の古い体育館には恐ろしい噂があり…。


空襲に遭った人々の霊がうごめく古い体育館で恐ろしい出来事が…という王道学園ホラー。正直展開がスタンダードすぎてちょっと物足りないかなー。
全校生徒が体育館の恐い話を知ってるのに、ハブられ気味転校生の主人公だけが知らずにホイホイと近づいてしまいます。そういうのは早めに教えてあげて…。体育館の扉を開けたら地の底まで続いてそうな急な階段が…というシーンが高所恐怖症としては恐かったです。
タイトルが古事記ですが、本編では「幽霊に桃のコンポートを投げつけて撃退」のシーンがうっすら古事記です。山岸先生、古事記好きね。

秀才の榊くん&ハンサムでスポーツマンの西町くんと仲良くなったり、そこそこ明るく楽しい学園シーンもあるのですが、最後はホラーらしく「まだ恐怖は終わってはいなかった」系の終わり方です。いいですね。やっぱホラーとか不思議系の話はアンハッピーエンドで終わらないと!(←『アウターゾーン』のハッピーエンド率の高さが気に入らなかった人の感想)
そして霊現象に立ち会ったというのに一人だけまったく感応しない西町くん(体育会系)。私は超常現象的なものは一度経験したいですが幽霊はなるべく見たくないなーと思ってるので、彼のような強靱な(鈍感な)人間になりたいです。『わたしの人形は良い人形』の陽子母とかもそういうタイプでしたね。

制服が間に合わず、「セーラー服代わりに毎日マリンルックで登校」っていう可南子の発想が素敵! 子供の頃にこれ読んだ時は可南子の「なんちゃってセーラー服」に憧れたものです。さまざまなシーンでマリンルックを披露する可南子ちゃんに注目です。
そんなことより、校舎の裏側から立ち昇る「何か」を見ちゃった可南子ちゃんはこの後学校に通えるのでしょうか…? ていうかこの学校、生徒も教師も全員何かあること知ってるんだから近いうちに取り壊しになるんじゃないかな。

グール(屍鬼)

Category:山岸凉子

グール(屍鬼)
1979年

スピンクス(花とゆめコミックス)』(白泉社)
山岸凉子作品集〈9〉傑作集3 黒のヘレネー』(白泉社)
山岸凉子全集〈31〉黒のヘレネー(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
山岸凉子恐怖選〈3〉千引きの石(ハロウィン少女コミック館)』(朝日ソノラマ)
自選作品集 シュリンクス・パーン(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
山岸凉子スペシャルセレクション〈1〉わたしの人形は良い人形』(潮出版社)
に収録。



「なんでもいい
なにかの肉が食いたい 肉が食いたいんだ」


男は海難事故に遭い、奇跡的に無人島に流れ着いた。
島にはすでに一人の女がいた。
その奇妙な島では不思議なほど生き物が捕れず…。


「無理よ。この海の魚は絶対とれないわ。
私も何度もやったのよ」

もうずいぶん昔に島に流れ着いたと言う女。なぜか全てに諦め顔の女と対照的に、のろしの準備をしたり魚や鳥を捕ろうと奮闘する男だが、何も捕れないし救助も来ない。
そしてなぜか夜ごと自分を覗き込む奇妙な女…。

最初は無人島に漂着した人間のひかりごけ展開かと思ったんですが、もっと救いようのない話だった。個人的に、自分が死んでるのに気づいてない死者の話ってなぜか好きです。自分の死体が鳥につつかれてる場面を見るってどんな気分だろう。

死んでる人が果物や海草を食べてるのも謎だけど、魚・鳥・貝なんかの肉だけは決して口に入らないというのが不思議。タイトルがグールだからいつも肉に飢えてる的な? それか肉は人肉しか食べられなくなってるのか? 腕を食べられてもすぐ生えてくるというのが不気味ですね。

「互いに互いの肉をむさぼり食う。
私達はそんなものになってしまった」

この人たちがグールになっちゃったのってなんか生前の行いと関係あるんですかね? 特に何も悪いことしてないなら可哀想。死ぬこともできずに果物とワカメと自分の手だけ食べて時間が経つとか何の地獄だ…。

ところでこの作品は『自選作品集シュリンクス・パーン』に収録されてた時は、なぜか写植が他の収録作品と違って妙に細くて小さい明朝体になってて、なんかいかにもこれだけ異世界っぽい雰囲気になってていいかんじでした。スペシャルセレクション1では他の作品と同じ書体になってたけど(他の収録単行本は持ってないから知らない)。

笛吹き童子

Category:山岸凉子

笛吹き童子
1986年

笛吹き童子(プリンセスコミックス)』(秋田書店)
自選作品集 夜叉御前(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
山岸凉子スペシャルセレクション〈2〉汐の声』(潮出版社)
に収録。



笛にまつわる短編二本立て。


第1話「石笛」

山梨のとある旧家。亡くなった祖父の葬式にやって来た親戚は、宝の山(遺品)を漁りに来たハイエナばかり…。
残された祖母は曾孫である美沙ちゃんに倉の鍵を渡し、「石笛(いわぶえ)」という古い笛を渡します。おばあちゃんはボケちゃてますが、死者を悼むことすらしない金の亡者どもを許しはしません。生き霊となって美沙ちゃんに妖しげな笛を吹かせます。
「吹いてごらん! 美沙ちゃん」の顔が怖い!
少女が吹いた石笛によって、死者の屍は起きあがり地割れは起こり、腹黒い親戚達は全員家ごと地割れに飲み込まれます。BGMは筋肉少女帯の「ノゾミ・カナエ・タマエ」でお願いします。
ていうかおばあちゃん…美沙ちゃんの身にもなっておやりよ…。これおばあちゃん(本体)と倉にいた美沙ちゃんは助かってるんですかね?


第2話「笛吹き童子」

今度はいきなり平安時代です。
雅楽頭の総領であるはずの直行。しかし彼はとんでもなく楽器の才能がありませんでした…。
「楽器を弾く才能はなくても、そなたは壊れた楽器を丁寧に修復する。それは楽器を上手く弾くのと同じくらい立派なことですよ。でもうちは雅楽頭ですからねえ」というお母様のフォローが全然フォローになってません! もう楽器修復職人になればいいじゃん…。
楽器の道を諦めて2年経ったある夜、大工をやってた直行は「切り口ヶ原の笛の怪」こと笛吹き童子から壊れた笛を預かります。
その笛を完璧に直した時…、何ということでしょう(加藤みどりの声で)、直行に奇跡が…! こっちはハッピーエンド。よかったね。
マンガとか小説に出てくる笛や琴や三味線の「妙なる音色」とか「妙音」とか想像するのが好きです。きっとものすごく良い音なんだろうなーって。

ネジの叫び

Category:山岸凉子

ネジの叫び
1971年

赤い髪の少年(サンコミックス)』(朝日ソノラマ)
山岸凉子全集〈26〉天人唐草(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
自選作品集 わたしの人形は良い人形(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
山岸凉子スペシャルセレクション〈14〉メタモルフォシス伝』(潮出版社)
に収録。



造船王の娘・セシルは同じ大学のジョージと結婚した。
しかしジョージは財産目当てでセシルと結婚しただけだった。
ある日、二人が乗っていたヨットが嵐で転覆する。ジョージは好都合とばかりにセシルを見殺しにするが…。


初期のホラー。財産目当てだった夫を死んだ妻が苦しめるというオーソドックスな幽霊復讐譚。
セシルは金持ちですが顔は不美人、性格は気弱で健気という、いかにも結婚後即殺されちゃいそうなキャラ。
この話、ジョージも当然悪いんだけど、セシルにもあんまり好感持てないなぁ…。ジョージも言ってるけど、毎日毎日時計のネジ巻くだけのつまらない人間だし…。金で夫の気を引こうとするし…。
キーワードの「時計のネジ」ですが、セシルが生きてるうちのネジのギリギリ音がもうすでにちょっと怖いです(笑)
「財産相続の書類にサインする直前のセシルを殺してしまった」というだけでも充分因果応報なジョージに、さらなる不幸が襲う!

おれは おれは
あの時計なんかもってこなかったはずだ
ましてあれがこの車に はいるはずが な……


ギリギリギリギリ

海草がべったりくっついてびしょ濡れのセシルが怖い!
 「車に入るはずのないものが入っている」っていう状況もけっこう怖い。物理的な恐怖を感じます。
ジョージと浮気してた「意地悪な美人」エリザベスが祟り殺されなかったのが意外です。あ、ジョージも死んではいないか。永遠にネジの音聞かされてるだけで。
でもよく考えたらセシルの幽霊は生前と同じく時計のネジを巻いてただけで、ジョージに直接危害は与えてないよね。ジョージが勝手に怖がって落ちただけだよね。

着道楽

Category:山岸凉子

着道楽
1993年

ツタンカーメン〈1〉(希望コミックス)』(潮出版社)
鬼(潮漫画文庫)』(潮出版社)
山岸凉子スペシャルセレクション〈4〉甕のぞきの色』(潮出版社)
に収録。



とっておきの桜の着物を着て母の法事へ行こうとする志麻子
しかし着替えてもいないのにいつの間にか法事の時間になってしまった。
着替えるために家へ急ごうとする志麻子だが…。


常世長鳴鳥』『時じくの香の木の実』あたりでも意味なく頻発していた山岸先生のお着物好きが、ホラーと着物のコラボというよくわからないかたちで炸裂!

最初は、けっこう奇抜なアイデアが好きらしい志麻子さんの「お着物うんちくマンガ」といった雰囲気でしたが、志麻子さんが浴衣の上に綿入れを着込んだあたりからおかしい方向に。

「ほら 法事をやる予定の定願寺がすぐそこよ」
「ちょっと散歩のはずがこんな所まで来てしまうなんて」

着物のおしゃれにうるさい私がこんな浴衣に綿入れなんて格好で皆の前に出られないわ!(そりゃそうだ)
絶対にあの桜の着物を着て法事に出たいのよ!と、急いで支度に向かおうとする志麻子さんですが…。

この話は恐怖ものには珍しく、どことなくコミカルさが感じられる作品です。着替えを急ぐあまり気が動転した志麻子さんがなぜか卒塔婆や骨壺を手に持ってしまい、そのたびに
「きゃっ これは卒塔婆じゃないの」
「きゃっ 骨壺!?」

と叫ぶあたりとか、なんかのコントみたいです(笑)
死に装束をパクった女性はそのうち祟り殺されそうだ。

押し入れ

Category:山岸凉子

押し入れ
1997年

押し入れ(AmieKC)』(講談社)
押し入れ(KCデラックス)』(講談社)※上の復刻
に収録。



山岸先生が美内すずえ先生から聞いた「他人のフンドシ」恐怖話。
なんか押し入れとか箪笥ってむやみに怖いイメージないですか。特に押し入れって、子供の頃閉じ込められた記憶もないのにすごい怖い。

美内先生のアシスタントさんが、同居してるお姉さんと一緒に体験した恐怖とは!?
まずメインの前に不思議な出来事が2点。

1.押し入れの襖がいつの間にかうっすら開いていることがよくあった。
2.仕事から帰ってくると薄暗い部屋の中でコタツが赤く光ってることがよくあった。

日用品関連の怖い話来た! うっすら開いた襖ってなんか怖いよね!
暗闇で赤く光るコタツもいいですね。その部屋の幽霊さん、視覚に訴えてきてますね。
そんなことが何回かあって……
ある晩、姉妹二人で眠っているといきなりお姉さんが飛び起きて叫ぶのです。

「いる! だれかいる。押し入れの中にだれかいる!

夜は家にいないことが多い妹と違って、お姉さんの方は押し入れのおかしさに気づいてました。
「押し入れの隙間から女の人の目が見える」とか怖すぎる…!(これが男の人の目だったら別の意味で怖いけど)
ちなみにオチは「昔その部屋で女の人が殺されて押し入れに死体が入れられていた」という、典型的なものでした(山岸先生も言ってますが)。やっぱあるんだそういう話。

でも「コタツがついていた」ってのは何なんだろう?と読者が思った頃、
「もしかしてその死体を包んでいた布団って コタツ布団だったりして!!」
とか言い出す山岸先生!
本当かどうかはこの話では明らかにはなってませんが、推測が的確すぎ(笑)

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
アオイホノオ
おいピータン!!
大奥
カルバニア物語
きのう何食べた?
海月姫
たそがれたかこ
トクサツガガガ
ドリフターズ
ドロヘドロ
HUNTER×HUNTER
etc.

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