裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

「異能」タグのついた記事一覧

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青海波

Category:山岸凉子

青海波(せいがいは)
1982年

時じくの香の木の実(あすかコミックス)』(角川書店)
に収録。



「ゆっくりやすんでくださいね」

盲目の少年・多(まさる)が波打ち際を歩く。
多の見えない目には、すでにこの世を去った人々が見えていた。


「何かを代償に手に入れた異能」や「死後の人間」をテーマにしながらも、幽霊に優しい多くんと特に何も悪さをしない幽霊さんのおかげで、なんか妙に和み系の作品になっている短編。女の子の幽霊と貝拾いして遊んじゃってます。楽しげ。
「盲目・幽霊・海」といえば、『海底より』を思い出すんですが、あっちとは全然違いますね。真美さんも全盲になった暁にはこういう和み系「見えるひと」になってほしいです(無茶言うな)。

夫を残して死んでしまった幽霊さんが、夫が自分を喪った悲しみをようやく乗り越えて元気に暮らしているところを見届けて、安心して成仏していくシーン。「これでわたし、ようやく目を瞑ることが…」と言って逆に目を開く場面が印象的でした。

この作品が未だに一冊の単行本にしか収録されてないのは地味だからですかね…。(^_^;)
山岸作品の幽霊ものにしては負のオーラが漂ってなくて私はけっこう好きですけど。
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牧神の午後

Category:山岸凉子

牧神の午後
1989年

牧神の午後』(朝日ソノラマ)
青青の時代〈4〉(希望コミックス)』(潮出版社)
牧神の午後(MFコミックス)』(メディアファクトリー)
に収録。



翼を持った者には腕がない!
腕がある者には翼がない
それがこの地上の鉄則なのだ


1909年。ロシアバレエ団の新人、ヴァーツラフ・ニジンスキーは「アルミーダの館」で衝撃的なデビューを果たし、その異常なまでの才能で人々を驚かせ続けた。
しかしバレエマスター、ミハイル・フォーキンだけは、ニジンスキーの天才性の裏にある「社会にまるで適応できない」という重大な欠点に気づく。


伝説の天才バレエダンサー・ニジンスキーのお話。ミハイル・フォーキンの視点で描かれています。
上昇し続けて見えるあり得ない跳躍! 事故と間違うほどの拍手の音! 吠えるような歓声! 感動を通り越して動揺しはじめる観客! すごいなニジンスキー!

顔が変わった!?
姿が…フンイキが変わる!?
変身!? いや…! あれは そんな なまやさしいものじゃない
あれは… あれは まさしく憑依だ!


フォーキンは「憑依状態」(←バレエマンガにあるまじき単語出ました)のワッツァから金色のオーラが出ているのに気づきます。ワッツァは人間を超えた何かなのかも知れない。ワッツァの才能に驚きながらも、その反面、社交性が一切なく日常を生きていくことすら困難なワッツァの「影」にも気づきはじめます。

「ワッツァ 4メートル半も跳ぶなんて…よほど勢いでもつけているのか?」

「別に勢いなんか… 跳べるような気がしたから

フォーキンは「曲がるような気がするんだもん」という理由でスプーンをクニャクニャ曲げて見せた知人の息子とワッツァをダブらせます。子供のように既成の事実にとらわれずに「できる」と信じていられることが彼の力の源なのか。しかし、事実にとらわれないということは現実を習得できないことと同じ。ワッツァが世間の中で摩耗してしまうのではないかと危惧するフォーキン。
この作品ではニジンスキーの驚異的な才能を「一種の超能力」という観点から見てて面白いです。HUNTER×HUNTERで軍戯の天才少女・コムギちゃんが念のオーラ出せるみたいなかんじ? あの娘も軍戯以外何もできない子だったなあ…。
「翼はあるが腕を持たない」という比喩が上手い。実際、ある分野で天才と呼ばれる人たちって私生活はメチャクチャだったり人格破綻してたりしますもんね…。ワッツァみたいに「社会に適合できない」とかだったらまだいいですけど、家庭内暴力とかだとその人の仕事も嫌いになってしまう(井上ひさし嫌いになりました…)。

その後、ワッツァは普通の男としての幸せを追い求めて女性と結婚したら、パトロンで同性愛の関係だったセリョージャから恨まれて迫害され、ついには発狂してしまいます。すごい天才らしい生涯。(←不謹慎)
この物語ではフォーキンさんがワッツァの異能も欠点も気づいてくれてるから、フォーキン助けたれよ!と言いたくなってしまいますが、しょうがない。フォーキンはロシアバレエ団からいなくなるし、ニジンスキーの運命は決まってますからね…。

超能力にまで喩えられるニジンスキーの踊りを一度見てみたいなー。踊ってる時の映像が一切ないことがニジンスキーの伝説に一役買ってますよね。わかってるのに「空中で静止したかのような跳躍!」とか言われるとついYouTube検索してしまいます。ないっつーの。

イシス

Category:山岸凉子

イシス
1997年

ツタンカーメン〈4〉(希望コミックス)』(潮出版社)
イシス(潮漫画文庫)』(潮出版社)
に収録。



王の座に着いたオシリスは、妹のイシスと結婚させられる。しかしイシスは不気味な白髪と不思議な力を持っていたため、オシリスは彼女を厭う。
一方、オシリスの双子の弟であるセトはオシリス暗殺を企んでいた。


エジプト神話の登場人物・最強の魔術の女神であるイシスに焦点を置いたお話。原話が神話のせいか、妙に登場人物に感情移入しにくい上に好感も持てない作品。
特に、神話でのオシリスさんは普通にいい人なんですが、山岸版のオシリスはイシス無視の浮気者のいいとこなし。イシスはそんな夫に健気に尽くしてるけど、こいつのどこが好きなんだろう…。最大の疑問。
初夜なのに愛人ネフティスの所へ行ってしまったオシリスを待つイシスは『日出処の天子』の大姫のよう。

妻・ネフティスを寝取られた恨みからオシリスを殺してバラバラにして捨てるセト。殺人&死体損壊&死体遺棄です。でも死者蘇生の能力を持つイシスがオシリスを生き返らせます。
神話では謎の魔術でパパッと蘇生させてしまったイシスですが、山岸版ではそれなりに魔術の説明がされます。イシスの若さ全てとその辺にいた悪人の肉の分子を引き換えに、一瞬だけオシリスが生き返る…って、割に合わねー。

生き返ったはいいけど今すぐにも再び死にそうなオシリスに愛人ネフティスをあてがって「さあ! 子供を作るのよ」ってイシスさん…!
半分死人のオシリスとネフティスのベッドシーン(じゃない、棺シーン?)は何だか鬼気迫るものがあります。そんなわけわからん状況に置かれたらそりゃーネフティスも発狂するよね…。
オシリスはやることやった(というか、やらされた)後に再び死亡。その肌はまるで乾燥しているかのようにカサカサになっていました。それがエジプト最初のミイラになったそうな。

ちなみにオシリスを惨殺したセトは王にはなったものの、オシリスの呪いか子供が一人もできず、おまけに稚児趣味だったため、成長したオシリスの息子・ホルスに毒殺されましたとさ。
神話のセト様の悪役っぷりはけっこう好きです。

二日月

Category:山岸凉子

二日月(ふつかづき)
1990年

牧神の午後』(朝日ソノラマ)
山岸凉子スペシャルセレクション〈8〉二日月』(潮出版社)
に収録。



中学3年生になったえりは転校生の菊池という女子と隣の席になるが、菊池は何かというと自分の「超能力」や「予言」を誇示する。


超能力オタクの困ったちゃんと普通の女子の恋愛バトルというかんじでしょうか。

「暗い・ハッキリしない・鈍くさい」と言われていた菊池ですが、ある日、「スプーンが曲げられる」ということでクラスで有名になります。
最近えりといいかんじになってる伊達くんを好きな菊池は、自分の唯一のとりえ・超能力で伊達くんの気を引こうと頑張ります。
以下、菊池(自称巫女)の超能力発言。
「あたし オーラも見れるのよ。この中でいいオーラを出しているのは伊達くん。金色なの」
「みんなも誰かを呪いたかったらいってね。わたしのはよくきくから
「あのね 伊達くんね こんどの大会で怪我するわ」※伊達くんは陸上部
「特にあなたがそばに寄ると伊達くんに悪影響を及ぼすの」
「あなた達二人は最悪の相性なの」

自分と伊達くんの間に割り込もうとする菊池の不愉快な予言に、えりは当然怒ります。
嫌味にとるなですって!! ハッキリ悪意じゃないのよ!!
またこの菊池も決して堂々とアピールするわけじゃなく、「私はあなたの役に立てると思うから…」みたいなハッキリしないラブレターを出したりする、微妙な厄介な奴なんですよね。
「美人じゃないし特に魅力もないのに怪しい超能力にだけ妙に自信を持つ地味めの女子が彼氏に近づこうとする」って、「美人だけど意地悪な女子がライバル」とかよりよっぽどリアルで嫌です。

結局、不安ながらも「菊池さんの言うことなんか信じない!」を貫いたえりが勝ってめでたしなわけですが、中学生のくせにいやに論理的な伊達くんの言葉が菊池さんのアイデンティティをバッサリ斬ります。

「菊池さんは気の毒な人だと思う。
菊池さんはせっかくのパワーをマイナスの方へ方へと使っているんだもの」


「スプーンを曲げるという力は
人間のパワーの底知れなさを証明しているとは思う。
だけどそれがスプーンではだめなんだ。
その力を僕のように走ることのイメージに使ったり
もしくは物を創造するエネルギーやインスピレーションに
転換できなくては何の意味もないんだ」


と語る伊達くん。イメージコントロールで優勝した男。

さらに伊達くんは「超能力や霊的な力に魅かれるのは逃避的な人に多いと思う」という、各方面から反感買いそうな発言をしちまいます。いや私も思ってたけどもさ…!

えりや伊達くんは、悪い予言や占いにも逆らって現実の問題を解決していける人(最後までマイナスイメージを口に出さなかったえりちゃんは偉い)。
菊池さんは、生きにくい人生を霊的なものに頼って自分なりにしのいでいかなきゃならない人。
なんかぶっちゃけ菊池の気持ちの方がわかるなぁ…。

「考えようによっちゃ 普通に健康的で楽しく暮らせる力は
もうそれだけで超能力なのかも」
その「普通」ができない人が多分いっぱいいるんだと思うよ…。
よくこういう難しいテーマをマンガにできるなぁ、山岸先生ってば。
あ、「2月3日の節分より前の早生まれは前の年の干支に入る」というのは初めて知りました。

時じくの香の木の実

Category:山岸凉子

時じくの香の木の実(ときじくのかくのこのみ)
1985年

時じくの香の木の実(あすかコミックス)』(角川書店)
自選作品集 夜叉御前(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
山岸凉子スペシャルセレクション〈6〉夏の寓話』(潮出版社)
に収録。



「それを食べるのです。それを食べるとおまえ達のどちらかが
永遠に年を取らない者になります」


正妻の娘・日向(ひゅうが)、妾の娘・日影
ほぼ同時に8歳になった二人は、巫女である大叔母の屋敷に連れてこられ、どちらが跡継ぎとなるかが試される。差し出されたのは奇妙な果実…。
聴覚と引き換えに巫女になったのは日向だった。日向はそれ以来年を取らず、何年経っても幼女のまま、予言能力を持つ巫女として一族の頂点に君臨するのだが…。


私が一番最初に読んだ山岸マンガです。
かなーり暗い救いのない不老不死もの。山岸マンガらしく、誰も幸せになりません。
あと、着物がいっぱい出てきてキレイ。

いつまでも我儘な子供のままの日向、女として成熟した体を持てあます日影。対称的な二人の描写が見事ですよね。日影が自らを慰めるシーンが艶めかしい…。

なんだか性格の悪い日向はとにかく腹違いの姉の日影を嫌悪しますが、
醜く肉のついた大人の女の体を持つ日影は、日向が愛してやまない長兄と関係を持ってしまう。
そして日向は「永遠に年を取らない」の本当の意味を知る…。
衝撃的ですね、このシーン。何故今まで気づかなかったのか。

日向という存在は計画されていたものだったのか? 日向も思ってるように、そこが私も気になります。「神」と、その神の声を聞く「巫女」がいるなら結局二人必要だよなぁ…。

幼女に奉られる供物とか、突然壊れる廊下とか、全体的に不気味な雰囲気満載の作品。
またこの、日向が聴覚を失ってるせいで作品全体の空気を浸す静寂(日向以外誰も台詞を発しない)が妙に不安感をかき立てるんだ…。こういう「落ち着かないかんじの空気」を描かせたら山岸先生は日本一ですね。

日向のモノローグと台詞だけで進んでいた物語は、同じく日向の怖いモノローグで終わります。
「黄泉比良坂」もそうだけど、死者の一人称で話が進むのがすごいと思うんですよ…!

永遠に8歳のまま成長することもなければ衰える事もないわたしを
誰かが不安に思っているようですが…
バカにしないで
わたしの分別まで8歳というわけではないのだから


バックのキノコ雲が怖い!




*****
こんな話を見つけたので少し書きます。
ネタバレ注意。


「死んだ子供がその家の福の神になる」という言い伝えがあります。
だいぶ昔ですが、豪家や旧家では、死んだ子(の魂? 霊?)を手厚くもてなして、家の一画に子供部屋を作って食事や玩具も供えるという風習がありました。
その子がいる限りその家は安泰するという、いわゆる座敷童です。

日向もこの類の「神」になったんじゃないかと…。
うわー、実際の話とリンクさせるとなんか余計怖い!

「古い屋敷を取り壊す作業中、ドアのついてない座敷牢のような子供部屋が出てきた」ということもあったらしいです。使った形跡のない埃まみれの子供部屋……怖!

私がゾッとしたのは、
その子供に「体(魂の器)」として「お人形」を与えるという話。
日向が、自分がもらったと思って喜んでる(最後のページでも抱いてる)市松人形は、もしかしたらそれ用だったんじゃあ…。

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
アオイホノオ
おいピータン!!
大奥
カルバニア物語
きのう何食べた?
海月姫
たそがれたかこ
トクサツガガガ
ドリフターズ
ドロヘドロ
HUNTER×HUNTER
etc.

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