裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

今月買った本('10.7)

Category:雑記

今月の本2010.7月1

今月は68冊でした。また新書タイトル買いで失敗した…。
アオイホノオ目当てに買ってるゲッサンに今月から西森博之が参戦です。やばい、だんだん良い雑誌になってきちゃってるかも。

私が購入した本(ほぼマンガ)をこのブログで記録するようになってから、今月でちょうど一年…。
一年間で580冊買った計算になりますね。ワオ。
だから最近部屋がひどいことになってるのか…。
今月の本2010.7月4


今月の大人買い
今月の本2010.7月2
ようやく刃牙1部を揃えました。
面白いなー。個人的にトーナメントバトル好きじゃないからバキの過去編が好き。


今月の本2010.7月3
銃夢。
ジャケ買いのわりには面白かったです。ガリィ可愛い。

賭博堕天録カイジ

Category:福本伸行


カイジシリーズ第3弾。
正直イマイチです。


あらすじ

前回のパチンコで大勝したものの、遠藤に騙され再び無一文になったカイジは、坂崎のおっちゃんの家に1月半も居候し続けていたが、とうとう「いい加減出て行け」と言われてしまう。


カイジは坂崎家に居座り続け50日。
毎日毎日食っちゃ寝食っちゃ寝昼間は公園のトランポリンで遊ぶだけの日々。
黙示録ではコンビニでバイト、破壊録でも(強制)労働はしていたというのに、どうしちゃったんでしょうカイジくんは。シリーズを追うごとにダメ人間になっていくじゃありませんか。
やっぱり借金とか背負って「何とかしなければ」っていう状況に置かれないと何もしないのか…。

しかしこいつは真剣勝負をしてる時以外は本当に輝かない男ですね。

「無理無理・・・・ 無理・・・・ 無理・・・・」
こ・・・・こいつ・・・・ クズだっ・・・・!

坂崎もパチンコの相棒だった時にはまさかカイジがここまでクズだとは思わなかったんだろうな…。
しかし「沼」で当てて大金手にしたところで大人しくギャンブル卒業できたおっちゃんは勝ち組ですよ。

早く終わんないかな・・・・説教・・・・
おまえは小学生か!

くね・・


結局カイジはおっちゃんから300万円の手切れ金を渡され、家から追い出されてしまいます。(「悲しい男」とまで言われる主人公…)
そして前回の地下労働施設で一緒だった三好(クズ)&前田(クズ)に「俺らの今の上司がひどいイカサマ野郎なんでカイジさんのギャンブル力で負かしてください」と頼まれ、またまたギャンブルスタート。

今回の相手はその小物っぷりがガッカリな社長こと村岡隆ざんす。


帝愛の会長・兵藤の息子、
後に『堕天録和也編』でメインキャラを勤める坊ちゃんこと兵藤和也もここで登場。
 


ぶっちゃけこの「堕天録」は、今までの「黙示録」「破戒録」と比べるとあんまり面白くなかったです。
理由は主に以下の3つ。

・ギャンブルを始める動機が薄い(今までは借金背負ってたり命がかかってたりしてたわけで…)
・敵が小物(利根川とかと比べちゃうとなぁ…)
展開遅すぎ

特に3つ目! 社長考案の地雷ゲーム「17歩」というゲーム自体は面白そうなのに、あまりに長々しく描かれるもので面白いのかどうかわからなくなってきます。途中で戦況忘れるし…。
ついでに13巻通してずーっと同じ相手と戦ってるのも飽きる。どこまで行っても社長社長…。めくってもめくってもざんすざんす…。
なんかカイジシリーズはシリーズを追うごとに作中に出てくるギャンブルが減っていきますね…。
「黙示録」では5種類、「破壊録」では2種類、そしてこの「堕天録」ではついに最初から最後まで17歩。
あらま、ほぼ半分ずつ減ってるじゃあないですか。その代わり描写が長引くと。困ったもんだ。

個人的には
黙示録:★★★★★
破戒録:★★★★
堕天録:★
和也編:★
だなぁ…。

まあ冒頭の美心とのデートが面白かったからいいや。

未来は僕らの手の中

賭博破戒録カイジ

Category:福本伸行



気が付けば・・・・オレは地の獄・・・・!
どこかわからぬ・・・・地中の底の底・・・・
亡者巣喰う強制労働施設にいたっ・・・・!



カイジシリーズ第2弾。
前回よりギャグ多くてお気に入り。単純に博打マンガとして見ると黙示録の方が当然出来は良いけど、黙示録はちょっとシリアスすぎて重いので、破戒録くらいのギャグがあった方が個人的には嬉しいです(ちなみに堕天録はちょっといきすぎ…。黒沢といい、福本先生ってギャグで暴走する傾向があるよな…)。


あらすじ

前回の博打で耳と指を失った上にその治療代でさらに借金が増えたカイジは、お久しぶりの遠藤
「紹介して下さいよっ・・・・ギャンブル・・・・! 次は勝てる・・・・!」
と詰め寄りますが、逆に遠藤に捕らえられ、強制労働施設に連行されてしまいます。本当にバカです。



睡眠薬で眠らされたカイジは、気づいたら人間学園帝愛の地中強制労働施設にいました。
例の兵藤会長の「王国」建国のために毎日毎日ひたすら穴を掘る日々…。
作業のあとのシャワーすら流れ作業の日々…。
どうでもいいですが、体を洗う音が「モコ…モコ…」なあたり、やっぱり福本先生はちょっと変です。

モコ…モコ…モコ…モコ…モコ…

カイジは少ない給料9万1000ペリカ(地下オリジナル貨幣)を貯め、「一日外出券」を得て、何としてでも外に出よう! そしてまたオレの天才的な博打の腕で一発当てよう!と決心しますが、
地下の売店にはビールやおつまみがたくさん売られていました。


作業で疲れ切ったカイジが冷えたビールの誘惑に勝てるはずもなく…

「・・・・だけ・・・・・・・・1本・・・・」
1本・・・・!? 1本ってそれ・・・・ビールかい・・・・?
ビール350を1本ってことかい・・・・?

売店のおっさんを困らせるほどモジモジと注文。


あーあ…。
この売店のシーンはカイジの辛抱の弱さ、計画性のなさがすごく伝わってきますね。
そしてカイジが1ヵ月ぶりビールを飲むシーンでは福本先生の無駄な描写力が炸裂!
涙が出るっ・・・・! 犯罪的だっ・・・・! うますぎるっ・・・・!
労働のほてりと・・・・部屋の熱気で・・・・暑苦しい体に・・・・
1ヵ月ぶりのビール・・・・! 染み込んできやがる・・・・! 体にっ・・・・!
くっ・・・・! うわっ・・・・! ぐっ・・・・! 溶けそうだっ・・・・!
本当にっ・・・・ 本当に・・・・本当にやりかねないっ・・・・!
ビール1本のために・・・・強盗だって・・・・!

このほぼ1話まるまる使ったビールを飲むシーンと、他のおつまみもを食べるシーンも美味しそうでした。ここアニメ化して欲しいなー。逆境無頼の最終回で「1年後には続編作る」とか言ってもう何年…

そして地下編の敵役・大槻班長「欲望は小出しはダメなんだ」などともっともらしいことを言われ、どんどんおつまみを追加してしまうカイジ。もうやめて! カイジのペリカは0よ!
「バカ丸出しですね」
「バカだからね・・・・」

「食べ終わったら・・・・奴はとりあえず満足して・・・・ こう考えるだろう・・・・
明日からがんばろう・・・・ 明日から節制だ・・・・と・・・・!
その考えがまるでダメ・・・・
『明日からがんばろう』という発想からは・・・・どんな芽も吹きはしない・・・・!
明日からがんばるんじゃない・・・・ 今日・・・・ 今日だけがんばるんだっ・・・・!
今日をがんばった者・・・・
今日をがんばり始めた者にのみ・・・・明日が来るんだよ・・・・!

この「破戒録」、前回の「黙示録」では鬱陶しいほど出てきたこういったメッセージが、さすがに言いたいことも尽きたのか、この大槻班長の台詞以降あまり出てこなくなっています。
その分ストーリーがよどみなく進むしギャグも増えたので、これはこれで好きですが。

ビールとおつまみの誘惑にとらわれたカイジはその次の日もフラフラと散財し…

豪遊っ・・・・! カイジ 2日続けて豪遊っ・・・・!
で、豪遊したあとは一応猛省するカイジですが
カイジ破戒録31
その翌日も翌日もペリカを使い続け、とうとうバラ売りの柿ピーしか買えないトホホな状況がやって来ます。

そこに「チンチロリン」を持ち掛けてくる悪徳アンパンマンこと大槻班長
「どうだい・・・・? 今夜あたり こいつで復活ってのは・・・・?」
 
ようやく本格的に博打が始まる第10話。
カイジは「こんな連中に・・・・負けるはずがねえっ・・・・!」と意気揚々とチンチロリンに参加しますが、班長一味のイカサマによってボロ負けします。
そしてカイジは地下の中でもまた借金を背負うことに。どこまでも負け組な男です。
そんな中、カイジは「黙示録」で男の死に様を見せた石田さんの息子と偶然出会います。

「へえーっ! こんな大きな息子さんがいたんだっ・・・・!」
台詞が普通すぎて笑った。この人、博打してないと普通の兄ちゃんだな…!

その後カイジは班長達のサイコロが「どうやってもシゴロが出る」イカサマサイコロなのに気づき、同じ負け組連中と力を合わせて班長と再びチンチロ勝負を始めます。
このチンチロ大勝編は、カイジの中でもかなりスカッとするシーンですね! カイジ、周りの奴らを味方につけるの上手すぎ。カイジが得意げに手作りサイコロを投げるとことかすごい好きです。

あわれ、カイジの手作り「全面ピン賽」に負けた班長はたんまりペリカを貯めた金庫から253万5千も払うはめになってしまいました。
大事な貯金が減ってしまい、正直へこたれた班長はそっと場から離れようとしましたが、カイジはそんな班長を非情にも呼び止めます。
「忘れたか・・・・? 親は通常2回だぜ・・・・!

「張らせてもらう・・・・! もう一度全部っ・・・・! 総額304万2千張り・・・・!
さっきピンゾロの5倍づけで頂いたペリカをさらに張って、もう一度5倍づけ!
「このまま勝負すりゃあ・・・・またさっきの再現っ・・・・!
あの金がまた5倍づけ・・・・! 班長の支出は合計1800万だっ・・・・!
ふっ飛ぶぞっ・・・・! 奴の・・・・金庫の金全部っ・・・・!」

ぐわわわ
(←班長がぐにゃる音)

班長はさすがに「冗談じゃない」と言いかけますが、そこに帝愛のナンバー2・黒崎が現れます。
利根川さん亡き後カイジの新しい敵になるのかと思ったらこのあと全然出てこない謎のキャラ。

「黒崎様っ・・・・! 勘弁してくださいっ・・・・!
この金は私がこつこつ営々・・・・蓄えてきた汗の結晶でして・・・・
それをこんな・・・・必ず負けると知ってるギャンブルで・・・・」

「いやいや そうとは限らんぞ大槻くん
確かにこの勝負・・・・シゴロ賽を使えば100%負ける勝負だが・・・・
普通の賽を使えば 引き分けの目は出てくる・・・・!
216分の1ほど・・・・!


相変わらず帝愛の幹部は鬼畜です。

この勝負で得たペリカで「一日外出券」を買ったカイジは久々に下界に出ます。
カイジと仲間達は無事に地下と縁を切ることができるのか?
ここからパチンコ編スタート。



地下の負け組仲間5人から全てを托され、半年ぶりに地上に出たカイジ。
チンチロで勝ったペリカを「20日間外出する権利」と「現金80万円」に分けてもらい、探すはレートの高いカジノ。5人分の未来を背負ったカイジは責任重大です。

カイジは道ばたで出会った坂崎というおっちゃんに高レートのカジノを紹介してもらいます。そこの名物は、1玉4000円の裏パチンコ。当てれば余裕で5億という化け物です。
しかし、そこもやはり帝愛の経営するカジノでした。なんだかんだで結局カイジVS帝愛の形にもってく福本です。
利根川さんの写真が人相悪すぎて噴いた。

帝愛の自信作なだけあって、関係者以外では当てた者はまだいないパチンコ。
「出そうだが・・・・決して出さないのがこいつの特徴・・・・!
沼・・・・ 人喰い沼だよこいつは・・・・!

出ないパチンコを「沼」と表現する福本センス、いいですね。

坂崎は、常人とは違う空気を持つカイジを「打倒『沼』作戦」に誘います。

カイジは「あの沼を攻略し得る戦略がある」という坂崎の作戦に乗ることにしました。
カイジがギャンブルの主導権を握らないのは珍しいですね。

ゴキブリ這い回る坂崎のおっちゃんの家を掃除するカイジ。
カイジって結構きれい好きですよね。自分の部屋も片づいてたし。


そして、坂崎の娘・美心20歳の写真を見つけるカイジ。

おいおい・・・・! 何も・・・・そこまで似なくても・・・・!

「・・・・・・・・美心(みここ)か・・・・ 変な名前・・・・」

あ、フラグ立ったな。(立ってねーよ)
そんな愛娘・美心に目を付けたカイジを坂崎のおっちゃんはたしなめるのでした。
 

「沼」を経営するのは帝愛の一条という男。
沼編は事実上こいつとの戦いになります。
福本作品には珍しい美形キャラですが、後半はハンサムなカエルみたいな顔になってしまう男です。
福本作品の美形は美人薄命。(顔面が長続きしない的な意味で)


で、早い話が坂崎はこの一条にしてやられ、負けます。

信用してた坂崎の作戦も敗れ、カイジはおっちゃんの金を盗んで逃げようかとも考えますが、
どうしても盗みだけはできない優しいカイジ。

ジタ・・・ ジタ・・・
福本先生は「ジタジタ」を流行らせようとしてるのか!?

そしてカイジは自分のために、地下の仲間のために、おっちゃんのために、リベンジを決心します。
次から次へと「沼」攻略作戦を思いつくカイジ。やっぱりカイジが主導権を握らないと勝てないよね!
そこでカイジが助っ人に選んだのはまさかの遠藤
遠藤もカイジのせいで借金がかさんでいたので、文句を言いつつもこの作戦に乗ることに。
 まじさ・・!

痛いシーンの多い『カイジ』ですが、このパチンコ編の一条のリンチはマジで痛いです。
カイジが作戦のうちのひとつを無事に仕込んだ直後、一条らに押さえつけられて
爪と指の間に針を刺されます。

そんな、アルバート・フィッシュですら痛すぎて音を上げた拷問をアンタ…!
兵藤の焼き土下座といい、帝愛はこんな奴ばっかりなのか!?

そしてついに「沼」決戦の日。
カイジはゲージ棒に細工する、役物の一部をミルキーにするなどの戦略を駆使して「沼」に挑みます。
特に地盤沈下を利用してカジノのビルごと傾ける作戦は面白かった!


このパチンコ編は途中ちょっと運否天賦な展開になってしまったのが残念ですが、
台を傾けすぎて玉が詰まっちゃったシーンの描写には笑いました。

まるで・・・・枝を登る尺取り虫だ・・・・!
少しずつ 少しずつ 這い上がる・・・・!
光を求め・・・・ 積み重なる・・・・!
勝利への貯玉っ・・・・!

個人的にこのナレーション、『アカギ』の
束の間見えたマンズはカンに溶け天に昇った並のナイスナレーションだと思いますw

で、一度は玉切れになってカイジが真っ白に燃えつき、
「夢だろ・・・・これ・・・・ 夢に決まってる・・・・」
「ところがどっこい・・・・夢じゃありません・・・・!」


となったりもしたのですが、坂崎が札束を追加してくれてまた再開。
うーん、パチンコ編はこのへんの復活の決め手が地味なんだよな…。

そしてついに「沼」が1玉4000円の玉を吐き出す時が来た!

破戒録はスッキリした大勝利が多くていいですね!
今まで苦い勝利とか超苦い敗北しかなかったもんなぁ…。
みんなでワーイワーイと喜ぶシーンがこんなにあるのは破戒録だけかも。
この巻の表紙のカイジは今までになく良い表情だと思うんです。この表紙好き。
賭博破戒録カイジ(13)<完> (ヤングマガジンコミックス)

一条とも何だか少年マンガっぽい別れ。
でも地下懲役1050年はさすがに出てこれないと思うぞ…。


大金を手にして地下からも解放された幸せなカイジ。
ところが、借金取り・遠藤が最後の最後でやらかしてくれます。
実はパチンコやる時にカイジが遠藤から借りた金の金利は10分3割福利だったのだ!
遠藤はカイジに睡眠薬を盛り、カイジの取り分・1億8938万から1億2785万を引いてそっと姿をくらましていました。

ぐね・・・ ぐね・・・
やはりカイジが金持ちになることは許されないのか…!?(ストーリー的に)

自分と地下の仲間達とついでに石田さんの息子の解放金を帝愛に仕払った結果、
カイジの手元に残ったお金はたったの10万円でした。
あまりの自分の不甲斐なさに、解放された仲間達にも顔を合わせられずしょんぼりするカイジ。

帝愛の黒服のおじさんが「それでもあいつらおまえに感謝してるから行ってやれよ」と言いますが、
カイジは手元に残った10万円を普通のパチンコですったため無一文でした。
「会ったら絶対飲み食いになるじゃないっスか・・・・!
その時・・・・金がないから奢ってくれなんて・・・・とても・・・・
連中から見たらオレ ヒーローだから・・・・」

「まったく・・・・謙虚なんだか傲慢なんだかわからん男だ・・・・!
ほれっ・・・・! 3万ある・・・・! やる・・・・!
合流して来いっ くそヒーロー・・・・!」


この優しいおじさんが地味に好きなんですが、そんなん私だけだろうなーと思って何気なく「優しいおじさん カイジ」で検索したら大量にヒット。カイジファン、最高。

そしてカイジはめでたく焼き肉屋でみんなと再会。
「オレたちは必ず成功するっ・・・・!」

そうとも・・・・! オレたちは放たれたっ・・・・!
未来へ・・・・! 開かれた明日へ・・・・!



個人的にはカイジシリーズはここで終わっててよかったと思いますけど
賭博堕天録カイジ』に続く。

賭博黙示録カイジ

Category:福本伸行

photo
賭博黙示録カイジ(ヤングマガジンコミックス)
福本伸行
全13巻
週刊ヤングマガジン(講談社)

カイジ(2) (ヤンマガKC (623)) カイジ(3) (ヤンマガKC (640)) カイジ(4) (ヤンマガKC (659)) カイジ(5) (ヤンマガKC (674)) カイジ(6) (ヤンマガKC (709)) カイジ(7) (ヤンマガKC (726)) カイジ(8) (ヤンマガKC (745))



未来は僕らの手の中──


あらすじ

上京後、自堕落な日々を過ごしていた伊藤開司(カイジ)は、ある日金融業者の遠藤により、かつて自分が保証人になっていた借金を押し付けられ、法外な利息により385万円にまで膨らんでいることを知らされる。
遠藤に誘われるままカイジは、負債者に借金一括返済のチャンスを与えるというギャンブル船「エスポワール」(フランス語で「希望」の意味)に乗り込む。
そこで行われるのはカード12枚を使った「限定ジャンケン」。うまく勝てば借金は帳消しだが、負ければ命の保障はないというものだった。
カイジは幾度となく煮え湯を飲まされながらも、土壇場でのひらめきと思考を駆使して、生き残りを賭けた勝負に身を投じる。



私も最初は例にもれず、「何だこの鼻」って思ってましたよ。でもとかとか横顔で拒否反応示しちゃ損する面白さ!
マンガにおいて「絵の上手さ」はさほど重要じゃない!と思い知った作品です。『カバチタレ』とか『ナニワ金融道』もこういうタイプだったな。

ギャンブルの面白さもさることながら、「ざわ・・」「アウツ」「駄目っ・・・・!」「Fuck you ふざけるなゴミめら」などの、福本独特のセンスにすっかりはまってしまいました。
そして、「愛」とか「友情」とか「お金では買えない幸せ」の逆を行く「金が全て、勝たなければゴミ」な、福本作品独自の人生観。
「おまえの毎日って今 ゴミって感じだろ・・・・? 無気力で自堕落で非生産」

「金を摑んでないからだ・・・・・・!」

私達が日々うっすら思ってることを濃く煮詰めて言語化したよーな、絶妙な台詞回しがいいんですよね。
で、それをギャンブルと重ね合わせる手法がすごいと思う。(たまにやりすぎだけど)

そんなリアリストだらけの『カイジ』の中でも、一番イカしてるのは帝愛グループの幹部・利根川

特に、鉄骨渡り編の「人は仮になど生きていないし 仮に死ぬこともできぬ」にはシビれました!
利根川は帝愛に勤めてなかったら高校教師とかが向いてると思うんだ。


しかし福本先生はオリジナルギャンブルを考えるのが上手いですね。

たかがジャンケンでここまで描けるか!?と驚愕した「限定ジャンケン」

普通に暮らしてたらまずあり得ない「グーの買い占め戦略」とか、面白かったなー。

人を押しのける人生を隠喩した「人間競馬」

カイジ優しいな。

絶望感がとんでもなかった「電流鉄骨渡り」

夢に見そうですっ・・・・!

カイジが帝愛に反撃開始の「Eカード」

お待ちかねのカイジVS利根川!

とうとう兵藤会長と一騎打ちの「ティッシュくじ」

トリなのに地味!

どれも面白いけど、一番印象深かったのはやっぱり
地上74メートルの鉄骨の橋を命綱なしで渡りきれたら賞金という、もうギャンブルでも何でもない狂気の沙汰・「鉄骨渡り編」かな。

実際に渡りだして、ようやく真の「死の恐怖」を感じ始めたカイジ達。

これほど違うものか・・・・! 落ちても助かるという状況と・・・
落ちたら即・・・・死ぬ・・・・即死という状況では・・・・

とても渡れない・・・・! 落ちちまう・・・・ 落ちる・・・・ 落ちるっ・・・・?
落ちるっ・・・・!? 嫌だっ・・・・! 落ちたくないっ・・・・! 落ちたくないっ・・・・!


こんなに簡単で単純・・・・肝心なことに・・・・
・・・・ここまで追いつめられなきゃ・・・・気が付かないなんてっ・・・・!

…うーむ。本当は帝愛の企画するギャンブルってギャンブルじゃなくて、カイジらダメ人間どもへの過激すぎる人生指導~帝愛より愛を込めて~なんじゃないかという気がしてきました。各ギャンブルに1つ以上は教訓が…。

リタイアを申し出る参加者達!
助けて下さい! お金はいりません! 僕らもう止めます! 鉄骨に流してる電流も切って下さい!

しかし利根川はしらんぷり。
「ギブアップ・・・・? 真剣勝負にそんなものあるか・・・・ プロレスじゃあるまいし・・・・
奴らの精神はまるで病人・・・・ どんな事態に至ろうと・・・・ とことん真剣になれぬ・・・・という病だ・・・・
通常奴らは・・・・生涯その『仮』から目覚めない・・・・!
半ば眠っているような意識で日々を繰り返す 退屈を忌み嫌いながら その根本原因病理にはほおかむり
なぜそんなくそ面白くもない気分で・・・・この人生の貴重な1日1日を塗り潰せるか・・・・というと・・・・
いつもどんな時も 現実は奴らにとって『仮』だからだ
現実(こんなもの)が・・・・自分の本当のはずがない・・・・ 奴らはそう思いたいんだ・・・・
自分の人生の本番はまだ先なんだと・・・・! 『本当のオレ』を使ってないから今はこの程度なのだと・・・・
そう飽きず言い続け・・・・ 結局は・・・・ 老い・・・・ 死ぬっ・・・・!」


人は・・・・仮になど生きていないし 仮に死ぬこともできぬ 当然だ・・・・
この橋は荒療治だが 奴らが生まれ変わるいい契機かも知れぬ
この修羅・・・・ 死と相対した本当の『生』を突破できれば・・・・ 目覚めるかも・・・・
頭の霧が晴れる・・・・! 『再生』の扉が開くっ・・・・!!」

この台詞、本当に衝撃でした。「破戒録」の大槻班長の「今日がんばった者にのみ明日が来るんだよ」とセットで胸に刻んでおきたい名台詞です(福本マンガは悪役の名台詞が多いな)。
「ククク・・・・もっとも・・・・突破できれば・・・・だがな・・・・!」
ほんと利根川さんは名悪役だわ…。

鉄骨渡りといえば、このシーンも好きです。

人間がつまり・・・・希望そのものだったんだっ・・・・!
心細さのあまり何やらスピリチュアルな方向に走るカイジ。この時はまだ佐原がいてよかったね。
でも福本先生、全世界57億の民がそれぞれ孤独な鉄骨渡りをしているっていう人生観はどうかと思うw


個人的名場面

カイジシリーズの中で無駄にインパクトあるシーンが多かったのはやっぱり黙示録。



きさまらっ・・・・ きさまらっ・・・・ きさまらっ・・・・
・・・・それでも・・・・人間かっ・・・・!?

限定ジャンケンにて。
仲間のために力を尽くし、作戦のために自ら「別室」に堕ちたというのに、その仲間に裏切られた時の台詞。
このシーンは本当にもう…古畑&安藤にはらわた煮えくりかえりました。カイジがいなきゃとっくに負けて人生終わってたキング・オブ・クズ(©別冊宝島カイジPERFECT BOOK)どもが…!
この後、カイジは持ち前の機転で何とか別室から脱出しましたが、この二人の手酷い裏切りは「堕天録」に至るまでカイジにトラウマを残すことに…。かわいそう。
アニメ版のこのシーンは萩原聖人(カイジ役)の演技がよかった。



押さなければ押される・・・・ 押さなければ押される・・・・
・・・・けど・・・・ 押さないっ・・・・!
押さない・・・・ 押さない・・・・ 押さないんだっ・・・・!
押さなきゃ押されるとしても・・・・
押さないっ・・・・! オレは押さないっ・・・・!

人を押して(落として)進む「人間競馬」にて。
カイジの優しさがよくわかる台詞。
カイジは人を押しのけて生きることが少しもできないから負け組なんだろうけど、その甘さあってこそのカイジだと思います。いつまでも非常になりきれないお人好しでいて欲しいものです。
それにしてもカイジはよく泣く。



金はな・・・・ 命より重いんだっ・・・・!
世間の大人どもが本当のことを言わないならオレが言ってやるっ・・・・!
金は命より重い・・・・!
そこの認識をごまかす輩は 生涯地を這う・・・・!!

鉄骨渡り開始前。賞金1、2千万に命を賭けるべきか躊躇する奴らに対して。
「いわゆるレールの上を行く男達が命を削り続けて40台になった頃ようやく蓄えられる預金高が1千万2千万という金なんだ。それをしないで短時間で大金を得るには命くらい賭けなくちゃね」
相変わらず利根川さんの説教は無駄な説得力に満ちています。



鉄骨渡りにて。カイジ界の良心・石田さんの最期のシーン…。
「敗れて・・・・本当に無意味な・・・・無駄な一生だった・・・・」
違うっ・・・・! 無意味なんかじゃないっ・・・・!
石田さんは祈れたじゃないか・・・・!
最期の瞬間に自分以外の人間を心から案ずることのできた石田さんは・・・・
どんなに・・・・上等かっ・・・・!
やり遂げたんだ・・・・! 達した・・・・・・・・
決して無駄な人生なんかじゃないっ・・・・!

カイジは伝えたかった
「石田さんっ・・・・!」

この後の見開きはショックでした…。え、いつの間に!?みたいな。
最後の最後で矜持を見せた石田さんかっこいいよ!(´;ω;`)



み・・・耳が・・・・耳が・・・ないっ・・・・!
Eカードにて。やったぜカイジ!&やっちゃったぜカイジ!
賭けてたはずの片耳を、作戦のために自分で切り落としちゃうんだもん。ビックリ。
痛いシーンが頻出するカイジだけど、まさかここまでするとは思わなかった…! そりゃさすがの利根川も「この狂人がっ・・・・!」って驚いちゃうよ。
「惚けた老獪・・・・ 間抜けな人殺しめっ・・・・!」の台詞もかっこよかった。



「蛇でいてくれてありがとう・・・・!
疑ってくれて ありがとう・・・・!」

Eカード最終戦にて。利根川の疑り深い性格を逆手に取ったカイジがかっこよかった!
この後の奴隷は二度刺すっ・・・・!も最高でした。
どうやったらこんなイカした言い回しが出てくるんだ!



利根川、焼き土下座。
Eカードでカイジに敗北した利根川を待ち受けていたのは、兵藤会長(残虐趣味)の大好きな誠意いっぱい土下座用鉄板だった!
「本当にすまないという気持ちで・・・・胸がいっぱいなら・・・・
どこであれ土下座ができる・・・・!」


いっちゃってるぜ会長!
「黙示録」の中でも最もインパクトあるシーンではないでしょうか。
焼けた鉄板の上で10秒間土下座するという究極苦行を最後までやり遂げた利根川はやっぱり芯の通った悪役でした…!
そんな利根川の姿を見て「本当の敵は利根川じゃなくて兵藤会長だった」と気づいたカイジの目からは熱い涙。これ以降、カイジシリーズには二度と登場してない利根川幸雄の男気に拍手っ・・・・!
ていうか、なんでこんなに痛いシーンが多いんだカイジは…。他の福本作品はそうでもないのに。



胸を張れっ・・・・! 手痛く負けた時こそ・・・・胸をっ・・・・!
真の敵・兵藤会長に自作の「ティッシュくじ」で挑んだものの、イカサマのネタがばれて敗北したカイジ。
うっかり自分の指を4本も賭けてしまっていたカイジは心中大パニックで
助かりたいっ・・・・! 本当は助かりたいっ・・・・!
謝って許してもらえるものなら・・・・何度でも何度でも・・・・謝りたいっ・・・・!

と思いますが、石田さんや佐原や利根川の姿を思い出し、覚悟を決めます。
命乞いなどして・・・・ 自分のプライドまで明け渡すなっ・・・・!
やれっ・・・・! オレは・・・・負けたんだ・・・・ 敗者は失うっ・・・・!
それをねじ曲げたら・・・・ なにがなにやらわからない・・・・
負けを受け入れることが・・・・敗者の誇り・・・・
オレは・・・・負けをぼかさないっ・・・・!」

耐え難い恐怖と痛みを受け入れたカイジ、偉かった!
しかしこのスターサイドホテル編は耳はなくなるわ指は落ちるわ借金は増えるわの怒濤の一晩でしたね。全ては古畑のせいだ…。


そして、今までさんざん焼き印だの連続投身自殺だの耳切りだの指切りだの焼き土下座だのやっておいて
意外と少年マンガっぽい終わり方。


賭博破戒録カイジ』に続く!

ラプンツェル・ラプンツェル

Category:山岸凉子

ラプンツェル・ラプンツェル
1974年

ティンカー・ベル(サンコミックス)』(朝日ソノラマ)
シュリンクス・パーン(ロマンコミック自選全集)』(主婦の友社)
山岸凉子作品集〈8〉傑作集2 ティンカー・ベル』(白泉社)
山岸凉子全集〈29〉ダフネー(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
山岸凉子スペシャルセレクション〈11〉妖精王1』(潮出版)
に収録。



「マ ママン あたしはみにくいの?」
「そうよミケティ 外にでたらころされるわ」

植物学者のオクターヴは、塔の中に住む美しい少女ミケティと出会う。
ミケティは母親に「おまえは醜い」と言われ続けながら育てられていた。


山岸先生初期の親子愛憎もの。
初期なのでまだ絵は少女マンガしてますが、母親が娘に「おまえは醜い」という暗示をかけ続け、小さい頃から塔の中に監禁して育てる…というダークな設定はさすが山岸先生です。

「おまえをかわいいというのはママンだけよ。
おまえを愛しているから
ママンだけがおまえをかわいいといってだきしめてあげるのよ。
ほかのだれもおまえをだきしめてくれないのよ」


自分が世界で一番醜いと信じ込んでいるミケティ(ラプンツェル)の元にオクターヴ(王子さま)が現れ、「きみは本当は誰よりも美しいんだよ」と言って暗示を解いてくれるという比較的単純なストーリーながら、
昔、自分の婚約者を奪った美しい妹とミケティ(本当はその妹の娘)を重ね合わせ、「憎くてかわいい…あたしだけのミケティ」と愛憎入り混じった感情をぶつける母親の死に様はなかなかです。

美しすぎることは もっとも幸福になるか
もっとも不幸になるかの どちらかなのだから
あたしはそのどちらも おまえにのぞみはしない!
幸福になること…も!


オクターヴは「どこの世界に自分の子を醜いと言って育てる母親があるもんか。ミケティは妹さんの子なのですね」と言ってますが、今の山岸先生だったら産みの母親でも平気で描くと思います。
白雪姫の母親だって原話では実の母だし。

顔の石

Category:山岸凉子

顔の石
1991年

牧神の午後』(朝日ソノラマ)
山岸凉子スペシャルセレクション〈7〉常世の長鳴鳥』(潮出版社)
に収録。



30の大台に乗った妙子は「42の再婚のオジンでしかも中2のコブつき」と結婚した。
結婚相手の平山の娘・千愛(ちえ)は明るく素直でしっかりしたいい子で、妙子のことを「ママ」と呼んでくれる。
順調な結婚生活のように思えたが、平山家では不思議な現象が起こるようになる。


山岸先生のポルターガイストもの。
揺れるコップ。部屋の物音。散る花。飛ぶ座布団。
普通にカレー食べてる千愛ちゃんの横で座布団がプカプカ浮いてる1コマはなんかシュールです。
テーマのわりには描き方が怖くないのがありがたい作品。
妙子の夢に出てきた真っ赤な石炭ストーブと白無垢の花嫁は何の象徴?

「お父さん お母さんに約束したじゃない
他の誰とも結婚しないって!!」


千愛ちゃんが「お父さん心当たりない?」とか「お母さん怒ってる」とか言ってたのに、平山パパも鈍いですね。

「わたし…良い子で成績のいい千愛ちゃんを望んでいるのじゃないのよ。
それに千愛ちゃんのお母さんの代わりになれるなんてうぬぼれてもいないわ。
だけど 千愛ちゃんとはお互い思っていることをズケズケいえる
親友のようになりたいと思ってるの」


最後は妙子・千愛二人のお料理シーンというハッピーエンド。よかったー。
こういう、奇妙な出来事が起こりつつも悲惨な事件につながらない山岸作品って珍しいかも?
ポルターガイストは思春期の子供が起こすことが多いというのは有名ですが、「その家の霊が子供のエネルギーを利用する」という説は初めて知りました。

そういえばタイトルの「顔の石」の意味が謎です。検索しても「変な顔の石見つけた」みたいな記事ばかり引っかかるのです。

※タイトルについて追記(2010.8.23)
『山岸凉子スペシャルセレクション〈7〉』の創作秘話より

予定していたストーリーと全然違う内容になったので、
中身とタイトルがまーったく関係なくなってしまいました。

あ、そうなんだ。

ドリーム

Category:山岸凉子

ドリーム
1978年

妖精王〈5〉(花とゆめコミックス)』(白泉社)
山岸凉子作品集〈11〉傑作集5 篭の中の鳥』(白泉社)
山岸凉子全集〈23〉ドリーム(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
に収録。



岡元由子(ゆず)は母の再婚によって、クラスメイトの周防薔子の従妹になった。
旧家である周防家に遊びに行った由子は夢のような生活に酔うが…。


この話はすごい。
一般的には良いものとされている「夢」というものの別の側面を、よくここまでマンガの形に落とし込めるなぁと感心しました。

ワインたっぷりの晩餐会、手作りのタルトタタン、優雅な美男美女のいとこ。

「なんだか夢みたい。ここの生活が。このお家 ここの人々。
そしてなによりもここに私がいるということが。
あたしがいつも夢みていたことよこれは。
あたしだけじゃない 女の子ならみながもつ夢…」


周防家には丹穂生(におう)という絶世の美女がいます。
薔子(と由子)の従姉である丹穂生は、美しく上品で優しく若々しく、完璧な女性。
薔子も由子もみんな丹穂生のような女性になりたいと憧れています。
でもそんな丹穂生を、夫の晴比古はなぜか苦々しい表情で見つめるのでした。

クリスマスパーティーの日、美男子の従兄の勘解由(かげゆ)とダンスを踊ってもらった由子はすっかり
「私の夢、私の王子さま…」と夢心地でしたが、
「もういや! 勘解由ったら由子さんにやたら親切にするんですもの」
「はじめてこの家に来た人だもの 礼儀上だよ」
という薔子と勘解由の会話を聞いてしまい、夢から覚めます。

「私は勝手に夢を描いてしまっただけだった」と気づいた由子が帰り支度をしていた頃、晴比古は丹穂生に離婚をきりだしていました。

きみは夢を見ている。
恋愛したいという夢。結婚して妻となる夢。
庭師がいて料理人がいて あとは優雅に菓子なぞ焼く妻…という夢。
妻としてホステスとして立派なパーティーをきりもりしてみせるという夢。
それがすべてきみの夢であり このぼくはその夢の中のほんの1枚のカードでしかない。
あまりにきみが美しくて 優雅で…おうようで…
けれどそれがどこからくるのか
すべて すべて他人無視だからだ!!
他人を必要としない自分の夢の中にだけ住んでいるからだ」


丹穂生の優雅な生活は、リアルな人生ではなく夢ごっこ、壮大なおままごとにすぎないのです。
丹穂生という人が「自分の夢の中」に住んでいるというのは、何度聞いても由子(よそ者)の名前を覚えない、一週間ぶりに帰ってきた夫に「おはようあなた」としか声をかけない…などの行動に表れてましたよね。
こういう人物を描こうと思ったところがすごい! 実際いますよね、こういう「夢の中に住んでる」人。何ていうか、虚構と現実が入り混じっているというか、「現実」に「夢」が侵食してきてしまっているというか…。うーんうまく文章にできない…。どんだけ難しいテーマ扱ってるんですか山岸先生。

しかし丹穂生はたまたまブルジョワの旧家に生まれたから「庭師がいて料理人がいてお菓子を焼いてパーティーをきりもりする」的な夢を現実にセッティングすることができたけど、もっとフツーの庶民の家に生まれてたらどうなってたんだろう?
『カイジ』に出てくるダメ人間みたいに「こんなもの(現実)が本当の私のはずがない」とか思いながら暮らすんだろうか。ぜひ庶民バージョンも描いてみて欲しいものです。

かぼちゃの馬車

Category:山岸凉子

かぼちゃの馬車(旧題:「12時の時の精」)
1974年

ティンカー・ベル(サンコミックス)』(朝日ソノラマ)
シュリンクス・パーン(ロマンコミック自選全集)』(主婦の友社)
山岸凉子作品集〈8〉傑作集2 ティンカー・ベル』(白泉社)
山岸凉子全集〈31〉黒のヘレネー(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
山岸凉子スペシャルセレクション〈9〉鬼子母神』(潮出版社)
に収録。



シンデレラストーリーを夢見て遠縁のトレヴァス家にやって来たのに、いとこで当主のシリル卿の小間使いにされてしまったクラシニーラ
シリルの側にはいつもピエロと呼ばれる男の子がいて…。


山岸凉子初期のラブコメ(?)
昔の山岸作品っぽいロン毛の美形シリルと、可愛い系の男の子ピエロ。
ピエロを遊び道具のように扱うシリル坊っちゃんに怒り、道化役のピエロが気になってしまうクラシニーラですが、最後には愉快などんでん返し。
リアル調のかぼちゃの馬車がシュールです。

「罰はなにがよいかな。そうだ キスさせること!」
「ええっ あたしと!」
「どうしてあんたとなのさ。こっち(ピエロ)とだよ」
「え?」
この昔の少女マンガならではの何気ないBL、時代を感じますね。

「王子さまにピエロはつきもの」という台詞はピンとこない人が多いかも。

アイスクリーム

Category:お菓子・お料理の出てくる本

photo
アイスクリーム かんながかんなをつくったはなし
作:マルシャーク 絵:レーベデフ
岩波書店


2本立ての絵本ですが、食べ物が出てくるのは「アイスクリーム」の方です。
太ったおじさんが屋台のアイスクリームを食べまくり、最終的に巨大な雪だるまになってしまう…という、わりと訳のわからないお話。
絵はあっさりしてるのに、妙においしそうに見えるから不思議です。


アイスクリームかんな
天下一品 上等舶来
えー アイスクリーム
いちごの いちごの アイスクリーム

おさとうたっぷり アイスクリーム
おさらにのった ねっとり あまいよ
のこさずおあがり!

すくいとった やわらかな たま
ウェーファーに のせ さじで なでつけ
ウェーファーで ふた すれば できあがり


このアイスクリーム屋さんの口上が美味しそうで好き!
ねっとり甘い…ですって…。

マンガ名ゼリフ大全

Category:マンガ・創作関係



タイトル通り、マンガの名ゼリフを集めた本です。
全国500人&著名人32人のアンケートを元に選出した珠玉の名言250を収録(文庫版では200に減った)。

セリフは6ジャンルに分類。

勝負に挑む気概
・誰の真似でもない生き様
努力プライド
恋愛の甘さと苦さ
・見返り無用の友情
仕事の流儀


この本の良いところは、ほとんどの名ゼリフをちゃんとそのマンガの場面つきで紹介してくれるとこですね。
やっぱり文字だけじゃなくて、そのシーンも一緒に見ることで雰囲気がより伝わってきます。別冊宝島ならB5サイズだから見やすいし。
ここに載ってた一場面を見て「これ読んでみようかな」と買ったマンガも結構あります。
…でも著名人へのインタビューは別にいらなかったなー。


「やっぱり載ってた」と思ったもの。
「名ゼリフ」といえばこれは当然入るよねってセリフ。

「あきらめたらそこで試合終了だよ」
「燃えつきた…まっ白な灰に…」
「わが生涯に一片の悔いなし!!」
「やらない善よりやる偽善だ!」
「ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで…」
「長い間!!! くそお世話になりました!!!」
「あたしは仕事したなーって思って死にたい」
「退かぬ! 媚びぬ! 顧みぬ!」



「これを選ぶか」と思ったもの。
これを載せるか。私は好きだけど。ってセリフ。

「不様でも守りたいものがあります!!」(臨死!! 江古田ちゃん)
「究極の問いを発し続けろ! どこまでも高みへッ!!」(銃夢)
「幸福と善意と優しさと愛に満ちた世界を…要求する!!」(真説 ザ・ワールド・イズ・マイン)
「押さないっ・・・・! オレは押さないっ・・・・!」(賭博黙示録カイジ)

ザ・ワールド・イズ・マインとか、ちょっとマイナーっぽいマンガも結構登場します。
エアマスターも頻出。


この本は一応、セリフの「意味の良さ」で名ゼリフを選んでるようなので、「語感」とか「謎の迫力」タイプの名ゼリフは載ってません。
例えばジョジョなら、露伴さんの「もっともむずかしい事は自分を乗り越えることさ」とか、承太郎の「見るんじゃあなくて観ることだ、聞くんじゃあなく聴くことだ」とか、そのへんになります。
僕らの大好きな「貧弱貧弱ゥ!」とか「無駄無駄無駄無駄」とか「この味は嘘をついてる味だぜ」とかはナシ。ちょっと寂しいですね。

でも「友情」の章でBANANA FISHのアッシュのセリフを選んだのは評価します。あのセリフ一番好きなんだ…。

あと、どうでもいいこと。
『働きマン』の「由実」、『夕凪の街 桜の国』の「皆実」。この二人の名前はあちこちで「実」「美」になってる。この本でもやっぱり間違ってた。


※文庫版は上の本より掲載セリフが50少ないので注意

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
アオイホノオ
おいピータン!!
大奥
カルバニア物語
きのう何食べた?
海月姫
たそがれたかこ
トクサツガガガ
ドリフターズ
ドロヘドロ
HUNTER×HUNTER
etc.