裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

賭博黙示録カイジ

Category:福本伸行

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賭博黙示録カイジ(ヤングマガジンコミックス)
福本伸行
全13巻
週刊ヤングマガジン(講談社)

カイジ(2) (ヤンマガKC (623)) カイジ(3) (ヤンマガKC (640)) カイジ(4) (ヤンマガKC (659)) カイジ(5) (ヤンマガKC (674)) カイジ(6) (ヤンマガKC (709)) カイジ(7) (ヤンマガKC (726)) カイジ(8) (ヤンマガKC (745))



未来は僕らの手の中──


あらすじ

上京後、自堕落な日々を過ごしていた伊藤開司(カイジ)は、ある日金融業者の遠藤により、かつて自分が保証人になっていた借金を押し付けられ、法外な利息により385万円にまで膨らんでいることを知らされる。
遠藤に誘われるままカイジは、負債者に借金一括返済のチャンスを与えるというギャンブル船「エスポワール」(フランス語で「希望」の意味)に乗り込む。
そこで行われるのはカード12枚を使った「限定ジャンケン」。うまく勝てば借金は帳消しだが、負ければ命の保障はないというものだった。
カイジは幾度となく煮え湯を飲まされながらも、土壇場でのひらめきと思考を駆使して、生き残りを賭けた勝負に身を投じる。



私も最初は例にもれず、「何だこの鼻」って思ってましたよ。でもとかとか横顔で拒否反応示しちゃ損する面白さ!
マンガにおいて「絵の上手さ」はさほど重要じゃない!と思い知った作品です。『カバチタレ』とか『ナニワ金融道』もこういうタイプだったな。

ギャンブルの面白さもさることながら、「ざわ・・」「アウツ」「駄目っ・・・・!」「Fuck you ふざけるなゴミめら」などの、福本独特のセンスにすっかりはまってしまいました。
そして、「愛」とか「友情」とか「お金では買えない幸せ」の逆を行く「金が全て、勝たなければゴミ」な、福本作品独自の人生観。
「おまえの毎日って今 ゴミって感じだろ・・・・? 無気力で自堕落で非生産」

「金を摑んでないからだ・・・・・・!」

私達が日々うっすら思ってることを濃く煮詰めて言語化したよーな、絶妙な台詞回しがいいんですよね。
で、それをギャンブルと重ね合わせる手法がすごいと思う。(たまにやりすぎだけど)

そんなリアリストだらけの『カイジ』の中でも、一番イカしてるのは帝愛グループの幹部・利根川

特に、鉄骨渡り編の「人は仮になど生きていないし 仮に死ぬこともできぬ」にはシビれました!
利根川は帝愛に勤めてなかったら高校教師とかが向いてると思うんだ。


しかし福本先生はオリジナルギャンブルを考えるのが上手いですね。

たかがジャンケンでここまで描けるか!?と驚愕した「限定ジャンケン」

普通に暮らしてたらまずあり得ない「グーの買い占め戦略」とか、面白かったなー。

人を押しのける人生を隠喩した「人間競馬」

カイジ優しいな。

絶望感がとんでもなかった「電流鉄骨渡り」

夢に見そうですっ・・・・!

カイジが帝愛に反撃開始の「Eカード」

お待ちかねのカイジVS利根川!

とうとう兵藤会長と一騎打ちの「ティッシュくじ」

トリなのに地味!

どれも面白いけど、一番印象深かったのはやっぱり
地上74メートルの鉄骨の橋を命綱なしで渡りきれたら賞金という、もうギャンブルでも何でもない狂気の沙汰・「鉄骨渡り編」かな。

実際に渡りだして、ようやく真の「死の恐怖」を感じ始めたカイジ達。

これほど違うものか・・・・! 落ちても助かるという状況と・・・
落ちたら即・・・・死ぬ・・・・即死という状況では・・・・

とても渡れない・・・・! 落ちちまう・・・・ 落ちる・・・・ 落ちるっ・・・・?
落ちるっ・・・・!? 嫌だっ・・・・! 落ちたくないっ・・・・! 落ちたくないっ・・・・!


こんなに簡単で単純・・・・肝心なことに・・・・
・・・・ここまで追いつめられなきゃ・・・・気が付かないなんてっ・・・・!

…うーむ。本当は帝愛の企画するギャンブルってギャンブルじゃなくて、カイジらダメ人間どもへの過激すぎる人生指導~帝愛より愛を込めて~なんじゃないかという気がしてきました。各ギャンブルに1つ以上は教訓が…。

リタイアを申し出る参加者達!
助けて下さい! お金はいりません! 僕らもう止めます! 鉄骨に流してる電流も切って下さい!

しかし利根川はしらんぷり。
「ギブアップ・・・・? 真剣勝負にそんなものあるか・・・・ プロレスじゃあるまいし・・・・
奴らの精神はまるで病人・・・・ どんな事態に至ろうと・・・・ とことん真剣になれぬ・・・・という病だ・・・・
通常奴らは・・・・生涯その『仮』から目覚めない・・・・!
半ば眠っているような意識で日々を繰り返す 退屈を忌み嫌いながら その根本原因病理にはほおかむり
なぜそんなくそ面白くもない気分で・・・・この人生の貴重な1日1日を塗り潰せるか・・・・というと・・・・
いつもどんな時も 現実は奴らにとって『仮』だからだ
現実(こんなもの)が・・・・自分の本当のはずがない・・・・ 奴らはそう思いたいんだ・・・・
自分の人生の本番はまだ先なんだと・・・・! 『本当のオレ』を使ってないから今はこの程度なのだと・・・・
そう飽きず言い続け・・・・ 結局は・・・・ 老い・・・・ 死ぬっ・・・・!」


人は・・・・仮になど生きていないし 仮に死ぬこともできぬ 当然だ・・・・
この橋は荒療治だが 奴らが生まれ変わるいい契機かも知れぬ
この修羅・・・・ 死と相対した本当の『生』を突破できれば・・・・ 目覚めるかも・・・・
頭の霧が晴れる・・・・! 『再生』の扉が開くっ・・・・!!」

この台詞、本当に衝撃でした。「破戒録」の大槻班長の「今日がんばった者にのみ明日が来るんだよ」とセットで胸に刻んでおきたい名台詞です(福本マンガは悪役の名台詞が多いな)。
「ククク・・・・もっとも・・・・突破できれば・・・・だがな・・・・!」
ほんと利根川さんは名悪役だわ…。

鉄骨渡りといえば、このシーンも好きです。

人間がつまり・・・・希望そのものだったんだっ・・・・!
心細さのあまり何やらスピリチュアルな方向に走るカイジ。この時はまだ佐原がいてよかったね。
でも福本先生、全世界57億の民がそれぞれ孤独な鉄骨渡りをしているっていう人生観はどうかと思うw


個人的名場面

カイジシリーズの中で無駄にインパクトあるシーンが多かったのはやっぱり黙示録。



きさまらっ・・・・ きさまらっ・・・・ きさまらっ・・・・
・・・・それでも・・・・人間かっ・・・・!?

限定ジャンケンにて。
仲間のために力を尽くし、作戦のために自ら「別室」に堕ちたというのに、その仲間に裏切られた時の台詞。
このシーンは本当にもう…古畑&安藤にはらわた煮えくりかえりました。カイジがいなきゃとっくに負けて人生終わってたキング・オブ・クズ(©別冊宝島カイジPERFECT BOOK)どもが…!
この後、カイジは持ち前の機転で何とか別室から脱出しましたが、この二人の手酷い裏切りは「堕天録」に至るまでカイジにトラウマを残すことに…。かわいそう。
アニメ版のこのシーンは萩原聖人(カイジ役)の演技がよかった。



押さなければ押される・・・・ 押さなければ押される・・・・
・・・・けど・・・・ 押さないっ・・・・!
押さない・・・・ 押さない・・・・ 押さないんだっ・・・・!
押さなきゃ押されるとしても・・・・
押さないっ・・・・! オレは押さないっ・・・・!

人を押して(落として)進む「人間競馬」にて。
カイジの優しさがよくわかる台詞。
カイジは人を押しのけて生きることが少しもできないから負け組なんだろうけど、その甘さあってこそのカイジだと思います。いつまでも非常になりきれないお人好しでいて欲しいものです。
それにしてもカイジはよく泣く。



金はな・・・・ 命より重いんだっ・・・・!
世間の大人どもが本当のことを言わないならオレが言ってやるっ・・・・!
金は命より重い・・・・!
そこの認識をごまかす輩は 生涯地を這う・・・・!!

鉄骨渡り開始前。賞金1、2千万に命を賭けるべきか躊躇する奴らに対して。
「いわゆるレールの上を行く男達が命を削り続けて40台になった頃ようやく蓄えられる預金高が1千万2千万という金なんだ。それをしないで短時間で大金を得るには命くらい賭けなくちゃね」
相変わらず利根川さんの説教は無駄な説得力に満ちています。



鉄骨渡りにて。カイジ界の良心・石田さんの最期のシーン…。
「敗れて・・・・本当に無意味な・・・・無駄な一生だった・・・・」
違うっ・・・・! 無意味なんかじゃないっ・・・・!
石田さんは祈れたじゃないか・・・・!
最期の瞬間に自分以外の人間を心から案ずることのできた石田さんは・・・・
どんなに・・・・上等かっ・・・・!
やり遂げたんだ・・・・! 達した・・・・・・・・
決して無駄な人生なんかじゃないっ・・・・!

カイジは伝えたかった
「石田さんっ・・・・!」

この後の見開きはショックでした…。え、いつの間に!?みたいな。
最後の最後で矜持を見せた石田さんかっこいいよ!(´;ω;`)



み・・・耳が・・・・耳が・・・ないっ・・・・!
Eカードにて。やったぜカイジ!&やっちゃったぜカイジ!
賭けてたはずの片耳を、作戦のために自分で切り落としちゃうんだもん。ビックリ。
痛いシーンが頻出するカイジだけど、まさかここまでするとは思わなかった…! そりゃさすがの利根川も「この狂人がっ・・・・!」って驚いちゃうよ。
「惚けた老獪・・・・ 間抜けな人殺しめっ・・・・!」の台詞もかっこよかった。



「蛇でいてくれてありがとう・・・・!
疑ってくれて ありがとう・・・・!」

Eカード最終戦にて。利根川の疑り深い性格を逆手に取ったカイジがかっこよかった!
この後の奴隷は二度刺すっ・・・・!も最高でした。
どうやったらこんなイカした言い回しが出てくるんだ!



利根川、焼き土下座。
Eカードでカイジに敗北した利根川を待ち受けていたのは、兵藤会長(残虐趣味)の大好きな誠意いっぱい土下座用鉄板だった!
「本当にすまないという気持ちで・・・・胸がいっぱいなら・・・・
どこであれ土下座ができる・・・・!」


いっちゃってるぜ会長!
「黙示録」の中でも最もインパクトあるシーンではないでしょうか。
焼けた鉄板の上で10秒間土下座するという究極苦行を最後までやり遂げた利根川はやっぱり芯の通った悪役でした…!
そんな利根川の姿を見て「本当の敵は利根川じゃなくて兵藤会長だった」と気づいたカイジの目からは熱い涙。これ以降、カイジシリーズには二度と登場してない利根川幸雄の男気に拍手っ・・・・!
ていうか、なんでこんなに痛いシーンが多いんだカイジは…。他の福本作品はそうでもないのに。



胸を張れっ・・・・! 手痛く負けた時こそ・・・・胸をっ・・・・!
真の敵・兵藤会長に自作の「ティッシュくじ」で挑んだものの、イカサマのネタがばれて敗北したカイジ。
うっかり自分の指を4本も賭けてしまっていたカイジは心中大パニックで
助かりたいっ・・・・! 本当は助かりたいっ・・・・!
謝って許してもらえるものなら・・・・何度でも何度でも・・・・謝りたいっ・・・・!

と思いますが、石田さんや佐原や利根川の姿を思い出し、覚悟を決めます。
命乞いなどして・・・・ 自分のプライドまで明け渡すなっ・・・・!
やれっ・・・・! オレは・・・・負けたんだ・・・・ 敗者は失うっ・・・・!
それをねじ曲げたら・・・・ なにがなにやらわからない・・・・
負けを受け入れることが・・・・敗者の誇り・・・・
オレは・・・・負けをぼかさないっ・・・・!」

耐え難い恐怖と痛みを受け入れたカイジ、偉かった!
しかしこのスターサイドホテル編は耳はなくなるわ指は落ちるわ借金は増えるわの怒濤の一晩でしたね。全ては古畑のせいだ…。


そして、今までさんざん焼き印だの連続投身自殺だの耳切りだの指切りだの焼き土下座だのやっておいて
意外と少年マンガっぽい終わり方。


賭博破戒録カイジ』に続く!

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
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etc.