裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

ドリーム

Category:山岸凉子

ドリーム
1978年

妖精王〈5〉(花とゆめコミックス)』(白泉社)
山岸凉子作品集〈11〉傑作集5 篭の中の鳥』(白泉社)
山岸凉子全集〈23〉ドリーム(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
に収録。



岡元由子(ゆず)は母の再婚によって、クラスメイトの周防薔子の従妹になった。
旧家である周防家に遊びに行った由子は夢のような生活に酔うが…。


この話はすごい。
一般的には良いものとされている「夢」というものの別の側面を、よくここまでマンガの形に落とし込めるなぁと感心しました。

ワインたっぷりの晩餐会、手作りのタルトタタン、優雅な美男美女のいとこ。

「なんだか夢みたい。ここの生活が。このお家 ここの人々。
そしてなによりもここに私がいるということが。
あたしがいつも夢みていたことよこれは。
あたしだけじゃない 女の子ならみながもつ夢…」


周防家には丹穂生(におう)という絶世の美女がいます。
薔子(と由子)の従姉である丹穂生は、美しく上品で優しく若々しく、完璧な女性。
薔子も由子もみんな丹穂生のような女性になりたいと憧れています。
でもそんな丹穂生を、夫の晴比古はなぜか苦々しい表情で見つめるのでした。

クリスマスパーティーの日、美男子の従兄の勘解由(かげゆ)とダンスを踊ってもらった由子はすっかり
「私の夢、私の王子さま…」と夢心地でしたが、
「もういや! 勘解由ったら由子さんにやたら親切にするんですもの」
「はじめてこの家に来た人だもの 礼儀上だよ」
という薔子と勘解由の会話を聞いてしまい、夢から覚めます。

「私は勝手に夢を描いてしまっただけだった」と気づいた由子が帰り支度をしていた頃、晴比古は丹穂生に離婚をきりだしていました。

きみは夢を見ている。
恋愛したいという夢。結婚して妻となる夢。
庭師がいて料理人がいて あとは優雅に菓子なぞ焼く妻…という夢。
妻としてホステスとして立派なパーティーをきりもりしてみせるという夢。
それがすべてきみの夢であり このぼくはその夢の中のほんの1枚のカードでしかない。
あまりにきみが美しくて 優雅で…おうようで…
けれどそれがどこからくるのか
すべて すべて他人無視だからだ!!
他人を必要としない自分の夢の中にだけ住んでいるからだ」


丹穂生の優雅な生活は、リアルな人生ではなく夢ごっこ、壮大なおままごとにすぎないのです。
丹穂生という人が「自分の夢の中」に住んでいるというのは、何度聞いても由子(よそ者)の名前を覚えない、一週間ぶりに帰ってきた夫に「おはようあなた」としか声をかけない…などの行動に表れてましたよね。
こういう人物を描こうと思ったところがすごい! 実際いますよね、こういう「夢の中に住んでる」人。何ていうか、虚構と現実が入り混じっているというか、「現実」に「夢」が侵食してきてしまっているというか…。うーんうまく文章にできない…。どんだけ難しいテーマ扱ってるんですか山岸先生。

しかし丹穂生はたまたまブルジョワの旧家に生まれたから「庭師がいて料理人がいてお菓子を焼いてパーティーをきりもりする」的な夢を現実にセッティングすることができたけど、もっとフツーの庶民の家に生まれてたらどうなってたんだろう?
『カイジ』に出てくるダメ人間みたいに「こんなもの(現実)が本当の私のはずがない」とか思いながら暮らすんだろうか。ぜひ庶民バージョンも描いてみて欲しいものです。

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

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etc.