裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

常世長鳴鳥

Category:山岸凉子

常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)
1985年

時じくの香の木の実(あすかコミックス)』(角川書店)
山岸凉子スペシャルセレクション〈7〉常世長鳴鳥』(潮出版社)
に収録。



あんたなんて あんたなんて 早く死ねばいいのよ!

美しく病弱な姉をもつ中学生の雪影(ゆきえ)は、幼い頃から姉・花影(はなえ)を憎んでいた。
家族の愛、自分の将来、好きな人まで奪われそうになった雪影は、ある行動に出る…。


美しい姉・花影は冒頭からいきなり川にはまって死んでます。そこから始まる雪影の回想。
山岸先生お得意の姉妹因縁ものです。家族から心配され愛される花影。健康体ゆえに家族からほっとかれる雪影…。
瑠璃の爪』の複雑な愛憎模様に比べたらだいぶシンプルな「恨み」一直線のストーリーとなっていますが、その分「不美人で健康な妹(設定だけに留まらず、実際に不細工に描くとこが山岸先生のすごいところだ;)」の行いの恐ろしさが際立ちます。
わざと花影を階段で転ばせるとか、鳥の羽散らしてわざと喘息を起こさせるとか…この度を超えた嫌がらせがホラーじみてて怖い! しかも誰にもバレないように実行するという狡猾さ。

黒のヘレネー』のクリュタイムネストラ(この人は不美人な姉)が言っていたように、人の性格は周りの態度や言葉によっても作られていくのだ、ということを山岸先生は作品でたびたび語ります。
性格の悪い雪影だって昔は普通にいい子だったはず。両親や祖母が花影ばかりを可愛がり、雪影を顧みなかったせいで、雪影の心はどんどんねじくれていったのです。
一方家族に大事にされて育った花影はおっとり優しいお姉さんで、雪影に怒鳴られても謝るだけ。妹に憎まれる姉が必ずしも性格悪いわけではないのも山岸姉妹系作品の特徴だなあ。
ちなみに花影は意味もなく綺麗な着物姿を披露します。ぶち抜きで。

雪影の憧れの先輩と花影が親しくなってしまったことで、雪影の怒りはとうとう頂点に。
やっぱり引き金は色恋沙汰なんですね。

なによ! なにもかも一人占めするつもり!?
あんたは何だって持ってるじゃない!
あたしの分も何もかも全部あんたが取ってったんじゃない
半分死んでるくせに なんだってそんなに欲ばりなの!


憤怒の形相で花影の半衿をズタズタに切り裂く雪影が怖い。
この後花影は雪影に川に突き落とされ、冒頭につながるわけですが…。証拠さえ出てこなければ過去の「バレない嫌がらせ」と同じく完全犯罪になるとこでした。おっかねえ。
「あたしは健康だし頭がいい」という、自分のなけなしの長所を並べ立る雪影…。切ないですなあ…。

ラストの、ニワトリの血にまみれながら満面の笑みで花影の着物を着てみる雪影がすげー怖い!

わたし これからお姉ちゃんのぶんも うんと親孝行するわ
お母さん達も気がつくと思うのよね
あたしがお姉ちゃんより ずっとずっといい子だということに

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

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etc.