裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

薔薇色ノ怪物

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薔薇色ノ怪物(2000)
丸尾末広
青林堂
全1巻


81年から82年あたりの作品を収録した初期短編集。全13編。
この表紙、絶望先生でパロられてましたよね。

丸尾末広の最近の絵はあんまり好みじゃないけど、初期の画風は高畠華宵っぽくて素敵!
唇の描き方とか超華宵。こういう昭和初期の美人画の流れを汲んだ絵好きだなー。個人的にはずっと初期の絵でいてほしかったなぁ…。
(高畠華宵はこういうかんじ↓)
薔薇色ノ怪物9

エログロスカトロ多めなので続きは下で。


「カリガリ博士復活」(82年)

正気と狂気。現実と空想。ひっくり返される真実。こういうの好きです。
なんか山岸凉子が描きそう。二人とも映画にそっくりだー。


「リボンの騎士」(80年頃)

デビュー作。
話はさっぱりわからないけど、謎の魅力があります。なんか癖になる…。つい何度も読んじゃう。
主人公のかおりちゃんが可愛いです。良い屋敷に住んでます。
薔薇色ノ怪物1
タイトルはなぜか手塚治虫だけど、69シーンのあたりからなんか楳図かずお臭がするなーと思ったら(まだらの少女的な…)丸尾氏って楳図ファンなんですね。だから『少女椿』で急に楳図タッチになるシーンあったのかー。あのシーンは笑った。


「下男の習性」(81年)

あらすじ:赤 座 が モ テ モ テ だ 。
すげーよ、何だこの一家面白すぎる。全員で赤座を取り合ってるよ…。
オチがよくできてて面白いです。短編らしい短編ってかんじ。坊ちゃんの小悪魔っぷりがすごい!
赤座さんの奥様への言葉責めがステレオタイプすぎるのがあまりいただけないですが…。
これに出てくる下男「赤座」は『少女椿』の赤座と見た目・名前ともほぼ同じ。スターシステム? こっちの赤座も途中で隻眼になるし。性格はこっちの赤座の方がクールガイです。
アヘ顔奥さんパート1。
薔薇色ノ怪物2


「僕らの眼球譚」(81年)

相思相愛の兄妹が庭師のおじさんを虐める話。禁断の愛でお耽美な雰囲気は最初だけ!
この話と「リボンの騎士」「血と薔薇」あたりは細かく描き込まれた背景のお部屋が素敵。雪子の服とか、ベッドなのに掛け布団は和布団とか、ちゃんと昭和の似非洋館っぽくてすごく良いです。
薔薇色ノ怪物3
チョッキンチョッキンチョッキンナー!! 何だっけこれ…。聞いたことある…。
例によって眼球舐めあり。この短編集もオキュロリンクタスシーン多いです。このタイトルといい、丸尾氏って絶対バタイユの『眼球譚』を愛読書にしているよ。賭けてもいい。


「私ハアナタノ便所デス」(81年)

スカトロ度☆☆☆
引きこもりのぼっちゃまの趣味に付き合わされるお手伝いの雪子さん。ひたすらスカトロな話。
好きな人にはたまらないでしょうねー。(←グルメ番組で好みでない食べ物を評するレポーター風コメント)
ぼっちゃまの左脚が義足なのは「ちんかじょん」と同じですね。何か意味があるのかな。
どうでもいいけど丸尾作品て「雪ちゃん」と「道雄くん」がしょっちゅう出てくるなあ…。


「少年Z」(82年)

抽象的作品。一般家庭に泊めてもらおうとする謎の少年。みんな目閉じたままなのが不気味。
「焼き肉になっちゃうじゃないの!!」
「ビビンバ!?」

ここは笑うところなのか!? しかもビビンバって肉じゃないような!


「天然の美」(81年)

ストーリーは特になし。
この狂った明るさは昔の日本のお祭りのそれだ…。
この「書き文字の笑い声がキャラクターの口から出る」という演出の発明すごいと思います。
ちなみに私は実際にこのような「さあみんなで笑いましょう!」という謎の団体に、公園で出くわしたことがあります。怖かったです。


「童貞厠之介」(81年)

うんこ度☆☆☆
産まれた直後、娼婦の母親に便所から下水に捨てられた少年・厠之介(ネーミングセンスキレすぎ)のお話です。下水育ちの下水暮らし。
『銃夢』のマカクと同じ悲惨な生い立ちながらも、下水暮らしをフツーにエンジョイする厠之介。うんこの中をクロールで泳ぐ!
薔薇色ノ怪物4
便器を「お母さん」と呼んで抱き、たまに外に出ても「家に帰らなきゃ」と下水に戻る。日常のすぐ下に潜む少年…。近年の水洗便所にはこういったロマン(?)はないですね。
「母」への思慕と怨恨がないまぜになったような厠之介が切なく、最後がちゃんとまとまってて素晴らしいです。食事中に読む勇気はないけど。
この厠之介は『夢のQ-SAKU』『DDT』にも登場するんですが、あっちはシャバに出た後の厠之介の姿なんですかね。あっちのミチロウ厠之介は目張りがすごい。


「血と薔薇」(81年)

耽美度☆☆☆
病弱なお姉様と、お姉様を愛する妹と、お姉様の恋人…。
薔薇色ノ怪物5
若干レズビアンの香り漂う耽美的な姉妹の物語。光雄さんが本当に「当時の好青年」ってかんじでステキ。初代リカちゃんの彼(ワタルくん)もこんなだったよね。
「光雄さん あたし達まだ一度も…」のシーンでさり気なく薔薇に指突っ込んでるお姉様。芸細かい。
「僕らの眼球譚」に続き、男性器切断2発目! この人切断ネタも好きだなー。
白目剥いて逝っちゃったお姉様に「恐怖と笑いは表裏一体」という言葉を思い出しました。


「最モ痛イ遊戯」(81年)

子供の拷問ごっこ。ストーリーは特になし。
子供の残酷さを描いた作品なのか単なるギャグなのか測りかねるかんじのラスト。
隊長役の少年が無駄に決まっててかっこいいです。しかしこいつら子供に見えない。


「腐ッタ夜」(81年)

資産家のオヤジに嫁いだ少女が恋人と共謀して夫を殺そうとするが、返り討ちにされてしまう。
薔薇色ノ怪物6
目を潰され、両腕を切断された小夜子と道雄はオヤジの蔵の中で「飼われて」しまう。それでも若い二人は舌でお互いを見つけ出し、血まみれのまま絡み合う…。
なんか酔っぱらった谷崎潤一郎が書きそう。
両腕切り落とされた道雄がどうやってチャック下ろすのかとそこばかり気になってしまいました。(←どうでもいいよ)
「たった一突き あの世ゆき これでおしまい 肉地獄」
道雄のこの台詞、なんか気に入っちゃいました。道雄くんセンスいいなあ。


「腐ッタ夜/ちんかじょん」(82年)

義足の少年・次郎の家に新しいお母さんがやって来る。
妖しい目をした継母を訝しく思う次郎。男狂いの継母が狙ったものは…。
薔薇色ノ怪物7
アヘ顔奥さんパート2。
次郎の計らいでルンペンに襲われても「ああいうのもたまにはいいわ」とか結果オーライな奥さん。こういう人だから次郎の企みが嫌がらせだったのか単なる親切だったのかわかんない(笑)
少年のス○ルファックは胎内回帰願望を想起させるなぁ…。
「ちんかじょん」って何?と思って調べたら、どっかの地方の方言なんですね。てっきり隠語か何かだと思ったら「小さい坊主」くらいの意味だった。


「少女椿」(81年)

収録順でいうと「下男の習性」の次ですが、感想長くなったので最後に持ってきました。
長編『少女椿』の序章的なお話。扉でのタイトルは「哀切秘話 少女椿」となってます。

『少女椿』の方は、みどりちゃんの性格とか根はけっこうイイ奴らかも知れない見世物小屋の芸人たちとかワンダー正光の存在とか適度なギャグのおかげで、どんなにみどりちゃんが気の毒な目に遭っていても物凄い悲壮感は感じませんでしたが、こっちの短編はけっこうきつかったです…。長編よりさらにアングラで暗いかんじ。みどりちゃん母の死に方えぐいよう。
私は元々女の子が可哀想な目に遭う話は苦手で『小公女』すら読めないいくじなしなんです…。

こっちのみどりちゃんは『少女椿』のみどりちゃんの長所である「負けん気の強さ」の描写のない、か弱い女の子のまま不幸のどん底に落ちていくので、普通に「うわっ、かわいそう…」という感想しか出てこなかったです。やり返さないみどりちゃんがこんなにも可哀想に見えるものだとは…(そんなみどりちゃんも長編ではうどん食ってる最中に虫下しトークを繰り広げるわけだけど…)。
最後まで何の救いもないお話で、見世物小屋のみんなもこの描かれ方だと完全に悪役。やっぱりこれの続きの長編あってこその少女椿だと思いました。
最後のみどりちゃんのモノローグ「遠足行きたい…」が秀逸。この流れで最後の台詞が「痛い」とか「誰か助けて」とかだったら本放り投げてたよ。かわいそすぎて。
昔流行ったお涙頂戴少女小説の不幸ゲージとエログロゲージいじったらこんなんなりましたってかんじ。貧困萌えの人にはたまらない…のか?
薔薇色ノ怪物8
鞭棄(股引仕様)の「お嬢ちゃん」発言に軽く衝撃(笑)そういえば一応客商売だし、意外とみんなTPOわきまえてるのかもなー。あとしゃべる芳一にもびびった。
なんか親方だけえらいキャラ変した? 長編の方の親方は子供騙したりしなそう。
あ、そういえば『少女椿』の感想で、みどりちゃんを最初に強○したのは鞭棄みたいに書いてしまいましたが、正しくは輪○でした。お詫びして訂正します。(←なんかいろいろ最悪だこの一文)
でも行動と嗜好が一致してるのは鞭棄だけなんだろうなあ(笑)他の人は多分(エロマンガにありがちな)「洗礼」的なノリだろうし。そういえば同じロリコンでもワンダー正光は純愛タイプでしたね。あのおぢさんは偉いよ。なんか。




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薔薇色ノ怪物(1982)
丸尾末広
青林堂
全1巻

最初の版。


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改訂版 薔薇色ノ怪物(2006)
丸尾末広
青林工芸舎
全1巻

短編「色彩間苅豆」が追加。
読んでない。

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。
別ブログ→山岸凉子漫画感想ブログ




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