裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

ストロベリー・ナイト・ナイト

Category:山岸凉子

ストロベリー・ナイト・ナイト
1981年

ハーピー(サンコミックス)』(朝日ソノラマ)
山岸凉子作品集〈9〉傑作集3 黒のヘレネー』(白泉社)
山岸凉子全集〈26〉天人唐草(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
山岸凉子恐怖選〈2〉メデュウサ(ハロウィン少女コミック館)』(朝日ソノラマ)
山岸凉子スペシャルセレクション〈12〉妖精王2』(潮出版社)
に収録。



狂った人間は 皆一様に狂っていないと言うのが通説ですってね

目覚めると「私」はまた精神病院に入れられていた。
しかし外に出ると、そこはいつもとはまったく違った世界だった。
その日、街の全ての人々は醜い自分をさらけ出していた。「私」はわけもわからずあたりを歩くが…。


山岸作品の中で最も好きな話のうちのひとつ。『鬼子母神』の次くらいに好きです。精神に問題は抱えてるけどなぜかとんがっちゃってる主人公が好き。
山岸作品によく出てくる「やたらモノローグの饒舌な主人公」である「私」の一人称で話は続きます。

「私」が目を覚ますと、そこは混乱の中だった。
街には人がゴロゴロ倒れている。薄汚れた子供達がお菓子を抱えている。
金が何の役にも立たなくなったと言うおじさん。泣きじゃくる男。
薬を飲んで布団で寝ている人。ひたすら食べ物を食べ続ける男…。

「私」の頭の中にはいろいろなことが巡る。
偽善者の麻美の説教。飲み会で男に言われた言葉。人前で不自然にお芝居していた自分。
この主人公は何の病気なんだろう? 「人格という莫大なお金とひきかえにここ(病院)に入ってしまった」って…演技性人格障害とか?

街は狂気と暴力に溢れている。「インテリ」と呼ばれ、いつも他人を裁いていたあの人が、車を暴走させ、人をひき殺している。
でもそんな人達を見ていると、「私」の心は逆に安定していくのでした。

なーんだ あたしと同じなのね
裁く人と裁かれる人は同じだったのね
ホッとしちゃったわ 今なら行きかう人の目が見つめられる
あたしったらいつも下を向いていたのよ
卑屈にならなくてもよかったのね
みんな あたしと同じなんですもの


「私」は今までの「顔」の仮面をはずします(比喩でなく、本当に仮面)。
きつい厚化粧の下からさっぱりした「私」の素顔が現れるシーンが印象的。

ああ! 深呼吸!!

そこに、ボロボロの格好をした警官が話しかけてきます。

「あなたはどこへ行くのかね。最後を共にしたい人はいないのかね?」
「あたし達はべつに どこへ行く必要もないじゃない」
「ああ…。どちらにしろもう間もなくだから…
間に合わなかったのはあなただけじゃないからね


これは
「終末の日、死を目の当たりにした街の全ての人間の仮面が剥がれたことで、元々仮面を上手く被れていなかった『私』の精神が自由になったのも束の間、全ての終わりは目前だった」
という話だと思ってるのですが、合ってるのでしょうか…。
で、病院で寝てた「私」は事実を何も知らないまま、あのラストシーン。
結局「私」は一瞬でも素顔に戻れて幸せだったのかなぁ。こういうかたちで主人公の精神が救われる(?)のは珍しいです。「私」の全快ぶりが切ないなぁ…。

あたし自分の部屋へ帰らなくちゃ
解るのよ あたし自分がすっかり良くなったって


「明日はあたしにも明るい日が待っているのかしら」と言う「私」の頭上に描かれたボールペン…じゃなくて核ミサイル(?)が怖い。
最期の時にお菓子とルービックキューブを求める子供達…(多分もうお店の人が逃げちゃってて、店の品物持ち出し放題という状況)。他に何かあるんじゃないかなー。いいのかなー。

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
アオイホノオ
おいピータン!!
大奥
カルバニア物語
きのう何食べた?
海月姫
たそがれたかこ
トクサツガガガ
ドリフターズ
ドロヘドロ
HUNTER×HUNTER
etc.