裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

スポンサーサイト

Category:スポンサー広告

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

紙芝居 少女椿

Category:丸尾末広

丸尾末広の『少女椿』の元ネタになったと言われている、浪花清雲原作の紙芝居です。
朝日グラフ社の『戦中戦後紙芝居集成』にストーリーが載ってたんで、かいつまんで紹介。
街頭紙芝居「少女椿」は長編で、全21巻。1巻1巻は10枚前後なので、全部で210枚くらいですかね。


これが紙芝居「少女椿」のみどりちゃんです。
紙芝居少女椿01じゃーん
髪型は丸尾版のみどりちゃんとほぼ同じ(というか当時の女の子はみんなこんな髪型だった)だけど、すごい刈り上げです。
丸尾版との共通点は主人公の「みどり」という名前、父親の家出、みどりが花売り娘、悪い大人に騙されるあたり。
当たり前ですがツンデレミイラもロリコン紳士も出てこない。
絵はどっちかっていうと花輪和一っぽいかんじ?


それでは紙芝居「少女椿」、はじまりはじまりー。カチカチカチカチ(←拍子木)


紙芝居少女椿02
主人公は貧しい家の女の子・笠原みどり
金貸しの三上を殺してしまったと思い込んだみどりちゃんのパパは、自らの命を絶つべく姿を消してしまいます。
丸尾版のみどりちゃんの「家出しちゃったお父さん」もそういう理由があったのかなぁ…。
幸い三上さんは生きていましたが、みどりちゃんのママは2万円(現在の30万円くらいである。多分)の借金を返さなければならなくなりました。借金の金額もさることながら、夫が早まって死んでしまったかも知れないことにもショックを受け、泣くみどりママ。初っぱなから飛ばしてますな。

それからみどりママは朝から夜まで仕事のし通し…。
何もできないみどりちゃんは淋しそうにママを見つめていました。貧乏人の家であることを如実に物語る窓のヒビが泣かせます。


紙芝居少女椿03
そんなある日、みどりちゃんは近所の花売り娘・ゆき子お姉さんを見てひらめきます。
「私にも花売りできないかしら…」
みどりちゃんはゆき子お姉さんに頼み、ママに内緒でこっそり花売りをすることにしました。

花売りの仕事は夜の8時に始まります。みどりちゃんは、ママに気づかれないようにそっと布団を抜け出し、外へ出ます。
8時にはすでに布団に入ってるのか…昔の子供って早寝…。

紙芝居少女椿04
みどりちゃんの分も花を仕入れてくれたゆき子お姉さんは、みどりちゃんに花売りの仕事のことを教えてくれます。
二人が歩いてやって来たのは銀座。みどりちゃんどこ住んでんの? 丸尾版のみどりちゃんと同じく浅草だったらけっこう歩くぞ。
ゆき子お姉さんはみどりちゃんに売れる場所を譲ってくれます。いい人です。でっかいリボンとほつれ毛が相まってオシャレなんだか貧乏くさいんだか何なんだか。

「お花、お花はいりませんか。お花を買ってください」
マッチ売りの少女よろしく、通り過ぎる大人に健気に声をかけるみどりちゃん。お花はいりませんかって言われてもねえ。
花売りといえば丸尾版の「少女椿水子編」でみどりちゃんが口に花くわえて売ってたのがエロいと思った。

紙芝居少女椿05 紙芝居少女椿06
慣れないせいか誰もお花を買ってくれず、悲しむみどりちゃん。
そんなみどりちゃんをずっと怪しい目で見ていた親方二人組の男がいました。
「おじさんがもっと売れる場所を教えてやろうか」
「え、ほんとう?」
「本当だとも……。一緒に来るかい?」
絵に描いたような怪しいおじさん達の典型的な誘い文句に乗ってついて行ってしまうみどりちゃん。君はピノキオか。
このまま「知らない人について行ってはいけません」的ポスターになりそうな図です。
さあどうなるみどりちゃん。


紙芝居少女椿07
二人のならず者につれて来られたのは東楽劇団という劇団でした。
純真・可憐なる少女、みどりちゃんは騙されて少女レビューの踊り子にされてしまったのです。
こっちのみどりちゃんは豚の内臓くわえる練習しなくてもよさそうなお仕事ですね。ちなみに芸名は「椿みどり」。
ここからみどりちゃんの髪型がマイナーチェンジしているのにお気づきでしょうか。今までは切りっぱなしのオカッパだったのに、踊り子にされてからは毛先が微妙に巻かれています。細かいです。丸尾版のみどりちゃんっぽくなりました。


紙芝居少女椿09
家に帰してもらえず、母恋しさに泣くみどりちゃん。
さらに、みどりちゃんを探しに出たみどりママは車に轢かれて重傷を負ってしまいます。やり過ぎ感。
しかし当時はこういうのが本当に流行っていた。
歌手にしてあげると騙されて人買いにさらわれ間一髪で逃げて家に帰ってみれば母は娘を捜しに出てしまっていてすれ違い、親切な婦人の家に世話になるも婦人が死に別の家に預けられたらその家の意地悪娘に虐められ、過去に自分を騙した人買い男に再び騙され乗せられた車が人買いもろとも事故るとか(by少女小説「ここに幸あり」昭和29年)。

父→殺人を犯したと勘違いして家出
母→娘をさらわれ、車に轢かれ重傷
娘→さらわれて踊り子に、親子離ればなれ
何だこの不幸DNAは…。丸尾版のみどりちゃんが「貧乏神」とまで言われる不運のかたまり娘なのも納得できます。この一家の一員じゃあ無理もない…。
でもこっちのみどりママは別に病床でネズミに食われたりしません。念のため。

紙芝居少女椿08
そんな不幸家族の大黒柱・みどりちゃんのパパは死にきれずに銀座の街をさまよっていました。
帽子と無精ヒゲ(落ちぶれアイコン)がキマってます。みどりパパは少女レビューの看板を見てビックリ!
「あっ、みどり」
そこには娘・みどりが踊り子「椿みどり」として載っていたのです。


いつの間にか看板スターになったみどりちゃんは、そこそこのお給金ももらいましたが、未だに家には帰してもらえません。
家に帰りたがるみどりちゃんを見て、劇団の団長・月浪小夜子(親方と紅悦を足したようなキャラ。でもわりと優しい)は用心棒に言います。
「いいかい雄治、よく見張っておくれ。あの子、家に帰りたがって困るんだョ」
「わかりやした、団長、気ィ付けておりましょう」
用心棒はみどりちゃんの部屋に鍵をかけてしまいました。
紙芝居少女椿10
部屋に閉じ込められたみどりちゃんは泣きながら窓を開け、三階から外を見下ろしました。ああ刈り上げ…。
するとなんと、外にはみどりパパがいたのでした。なんて都合の良い展開。
「みどりか。わしだ。お父さんだヨー
上と下で声を上げ、確かめ合う二人。これでもうめでたしめでたしか? ところが…。
「あの子は私の娘のみどりです。ちょっと会わせてください」
「椿みどりには手前のような親父なんていねェ」←無茶苦茶
「あの娘はわたしの……」
おきゃあがれ! 何を抜かす!」
用心棒達はみどりパパを追い出してしまいす。なんてヤクザな劇団だ。
紙芝居少女椿11


──中略──
『戦中戦後紙芝居集成』では↑から↓までのストーリー紹介がだいぶ省略されてます。
でも起承転結の転が延々続く怒濤のストーリー展開が続いていたであろうことは言うまでもない。


紙芝居少女椿12
いろいろあって大阪まで流れて来てしまったみどりちゃんは、いかした大阪弁兄弟・茂兄弟の力で劇団の外へ出ることができました。
「みどりちゃん、早う駅へ行くんや、ここはわてが何とでもするさかい、早う!!」
みどりちゃんを逃がそうとする茂兄弟と用心棒達が戦っているスキに、みどりちゃんは駅に辿り着き、列車に乗り込むことに成功しました。

「これでやっと東京に帰れる」
しかしなんという運命のいたずらでしょう。実はみどりちゃんを探してママとパパも大阪に来ていたのでした。
お涙頂戴メロドラマ特有の「あり得ないタイミングのすれ違い現象」が発動してしまうのか?
茂兄弟から話を聞いたママとパパは車を飛ばし、大阪駅に急ぎます。
一方、とうとう列車に乗ってしまったみどりちゃん! 
このまま親子がすれ違ってしまえばなんかもう永遠に物語が続けられますが、紙芝居「少女椿」はすでに最終巻の21巻。ちゃんと出会えます。

みどりちゃんが窓際の席に乗っていたことが幸いしました。
「あっ、いたぞ! みどりだ」
「みどり、みどりちゃーん」
「あっあーっ、お、お母さん、おかあさーんー」
「みどりーッ」
紙芝居少女椿13 紙芝居少女椿14
母と子の目にはみるみる涙が溢れます。久しぶりの涙の再会なのに名前を呼んでもらえなかったみどりパパの立場は一体。(※)
何はともあれ、ようやく3人再会できた笠原親子。めでたしめでたし。これでみどりちゃんがもらった給料をちゃんと持ってきてれば金の問題も解決しそう。
※当時は「母娘もの」と呼ばれる母と娘の別れと再会を感動的に書いたものが流行っていたので、父親は若干蚊帳の外気味なことが多い。


紙芝居「少女椿」これにておしまい。
最後の苦虫噛み潰したようなみどりパパの表情がすげー気になりますが、ハッピーエンドです。

しかし、こうやって元ネタを見ると、みどりの行き先を「少女レビュー」から「見世物小屋」に変更した丸尾氏は天才と言わざるを得ませんね。フリークスだもん。丸尾ファンなんて絶対みんな見世物小屋とか好きだもん。あと薄幸の少女がさらわれる先としては、見世物小屋に近いものではサーカス団とかがあったかなー。

ちなみにこの紙芝居、唐沢俊一&ソルボンヌK子の『大猟奇』にも紹介されてました。かりあげ…。
紙芝居少女椿15


関連記事
少女椿
少女椿(青林堂改訂版)

HOME

柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
アオイホノオ
おいピータン!!
大奥
カルバニア物語
きのう何食べた?
海月姫
たそがれたかこ
トクサツガガガ
ドリフターズ
ドロヘドロ
HUNTER×HUNTER
etc.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。