裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

グリーン・フーズ

Category:山岸凉子

グリーン・フーズ
1987年

パエトーン(あすかコミックス)』(角川書店)
山岸凉子スペシャルセレクション〈9〉鬼子母神』(潮出版社)
に収録。



「僕がピアノを弾くよ
マーシャは隣で僕の作曲した歌をうたうんだ
ねえチャック この兄妹愛は絶対うけると思うよ
マーシャ きみのような妹がいて 僕は本当に嬉しいよ」


気の弱いマーシャの兄・トビーは歌も歌える子役。一世を風靡していたトビーだったが、声変わりし、体が成長してしまったことで仕事がなくなる。
逆に歌の才能を見出されたマーシャはトビーと兄妹デュオを組むことになるが…。


ブラコン・不美人・気が弱いと三拍子揃ったマーシャは、有名な子役である兄を心から崇拝し、学校にも行かず毎日テレビで兄の姿を探していました。しかしトビーが子役として駄目になった頃、それを補うかのようにマーシャの歌の才能が開花します。
こうやって書くと普通に兄妹デュオのサクセスストーリーっぽいのですが(実際にそういう話ではある)、メインはやはり兄妹の確執、兄の心の闇、妹の心の病…。またしても誰も幸せにならない、みんな可哀想なかんじのお話。

可愛らしい子役だったトビー。しかし子役として避けられない運命が彼に訪れる。ボーイソプラノは父親そっくりのダミ声に。どんどん似合わなくなる半ズボン。
トビーが大人の男に向かって成長しだして両親ガッカリっていうシーンがなんか悲しい…。

本来ならそれは成長の当然の結果として歓迎されるものだったでしょう
しかしエンジェルのような という形容で売っていた兄には
これはあまりにむごい変身でした


トビーは誰からも成長を喜んでもらえなかたんだろうなあと思うと可哀想です。普通親って喜んでくれるじゃん。でもトビーの両親は「もう贅沢できなくなっちゃう」ということしか考えない。トビーというキャラクターは全然好感持てるようなキャラではないのですが、それでも可哀想。
そして息子の栄光を引き留めようと躍起になる母親…。ああよみがえる『汐の声』のトラウマ。実は私の怖いものリストには「ステージママ」が昔から入ってます…。怖い。

ほとんど自閉的なマーシャをトビーが上手くフォローし、敬愛するトビーの影に隠れてマーシャが歌う…という微妙なバランスながら、トビーとマーシャのデュオは順調に売れっ子になっていきます。
しかしマーシャは徐々に拒食に陥っていきました…。

無論 私は痩せてきました
するとその事が 少しは私を美しく見せるように思えるのです
そうなると食事をしない事が快感になってきたのです


そういえばこの作品はカーペンターズがモデルなんでした(スペシャルセレクション9のコメントより)。
カーペンターズのカレンも拒食症で亡くなってるんですよね…。カレンといえば前に昔の映像をテレビで見た時、似合わないフリフリの白のドレスを着せられてうつむいていたのが印象的でした。…まさかマーシャがフリフリドレス着て「似合わ…ない」と落胆するシーンはこれが元ネタか…?

とうとう倒れたマーシャにトビーが胸の内を吐露するシーンが、こ、怖い。
子供の頃の恨みを無意識のうちに妹に向ける兄。自分より遥かに優れ恵まれていると思っていた兄の心の内を初めて聞く妹。実はお互いがお互いを羨(恨)んでいた。このへんは『瑠璃の爪』に似てるかも。しかもどっちかっていうとトビーが絹子?

「昔 僕がパパやママやきみを養っていた事を覚えているだろ
5、6歳の子供が寝る間もなく働いて 毎日眠くてしかたなかったよ
子役としてだめになった時も ピアノを昼となく夜となく
吐き気がするほど弾かされて本当につらかった
つらくてつらくてたまらないのに 子供の僕にはどうする事もできなかったんだ
それなのに きみときたら 毎日テレビばかり見ているんだもの
ひどいよね 僕があんなに働いている時
もう一人の子供はろくに学校へも行かず 遊んでるなんてさ」


息も絶え絶えのマーシャにひたすら語りかけるトビー。「やっと本当の気持ちを打ち明けられた」といったプラスイメージでは描かれてないところが怖い。
…ところで、アメリカって確か子役の労働時間規制が厳しくて「子供が寝る間もなく働く」のは不可能だったと思うんですが(アメリカに双子の子役がやたら多いのもこれが関係してるらしい)…。まあ昔の話ということで…。

惜しいなー。これカーペンターズモデルじゃなきゃ山岸先生はきっとこの二人を兄妹じゃなく姉妹にしたはず。そしたら「姉妹の確執系作品」コレクションが一個増えたのに。惜しいなー。(←何を勝手なことを)

HOME

柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
アオイホノオ
おいピータン!!
大奥
カルバニア物語
きのう何食べた?
海月姫
たそがれたかこ
トクサツガガガ
ドリフターズ
ドロヘドロ
HUNTER×HUNTER
etc.