裏次元の一日

マンガ・アニメを研究したり分析したり考察したりしてなかったり。

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天人唐草

Category:山岸凉子

天人唐草
1979年

天人唐草(サンコミックス)』(朝日ソノラマ)
狐女・天人唐草』(小学館)
山岸凉子作品集〈10〉傑作集4 夏の寓話』(白泉社)
山岸凉子全集〈26〉天人唐草(あすかコミックス・スペシャル)』(角川書店)
自選作品集 天人唐草(文春文庫ビジュアル版)』(文藝春秋)
山岸凉子スペシャルセレクション〈5〉天人唐草』(潮出版社)
に収録。



「ぎえ──っ!」「ぎえ──っ!」

頑固で古風な父と貞淑な母を持つ岡村響子は、子供の頃から「慎みのある素晴らしい女性」になるように厳しくしつけられた。
特に、誇りに思う父の指示は響子にとって絶対だった。父の希望に応えようと精一杯務める響子だったが、父の言うことを聞けば聞くほど響子は、失敗を極度に恐れる自主性のない人間になっていった。


響子:主人公。他人の評価を異常に気にする気弱な女。自虐的。
青柳:会社の1個上の先輩。響子とは対称的な強気で色っぽいギャル。
新井:大卒のイケメンエリート。響子&青柳の憧れの的。
佐藤:中卒のチャラ男。ヘラヘラしているが能力は高い。

山岸凉子ファンでない人も語ることが多い傑作トラウマ短編です。
娘を「慎み深い、でしゃばらない女性」にしたい古武士のような父親の言うことを真に受けた結果、人生を狂わされた響子の物語。
子供の育て方に正解なんてない。でも、響子の両親の子育てだけは絶対間違ってる!と言い切れる…!
厳しいしつけ(お客様にきちんとご挨拶なさい、など)→響子ちょびっと失敗する→親フォローなしor叱責→響子二度とやり直せずどんどん自信失う…。
わあ、「褒める子育て」ってほんと大事なんだね!

失敗は恥ずかしいことではないと だれも教えてくれはしなかった
失敗をおそれる彼女は もう一度やりなおすということができない子どもになっていた


高校生の響子が隣の席の男子との教科書の貸し借りに失敗して以来、「無関心を装う」道を選んでしまうところ、すごくリアルです。私もそんなだったなー。

会社に勤めだした響子は、エリートで男らしい新井に憧れるが、「女としてのつつましさ」という大義名分に隠れて特に何もしない。一方、イケイケギャルの青柳さんはどんどん新井にアタックしていくのだった。
ある日、会社のおじさんたちに「お茶がちょっとぬるい」と言われ、さらに「叱責に敏感すぎてやりにくい」という陰口を聞いてしまった響子は泣いて帰る。そこに偶然佐藤が通りかかる。

「あんたさあ みえっぱりだよなあ」
「み…みえっぱり!? あ…あたしのどこが!!
あたし みえっぱりな女にはなるまいと心がけて来たはずです!
あなたみたいな人に何がわかるの!
ううん…だれもだれも あたしのことなんかわかってくれない
お…お茶ひとつ満足にいれられない女だって…
だけどあたしは一生懸命やってる! 一生懸命……! だけどだけど うまくやれない!
そこらへんのこんな小さな子どもにでも 簡単にできることがあたしにはできない!
その苦しみが あなたなんかにわかってたまるもんですか!」


「だ…だからさ ぼくがいったことはそれなんだよ
うまくやれないってことが なんでそんなに大変なことなんだい?
『なんでもうまくやれるすばらしい女だ!』と あんた言われたいんだよね だれかに…
『だれかにそう見てもらいたい』それが“みえ”なんだよ
他人の目を…他人の評価を気にし過ぎるんだよ」


佐藤さんはいい人だなあ…。佐藤さんとか調子麻呂とか井氷鹿とか、山岸作品の糸目男キャラは好きなキャラが多いです。まあ個人的に一番いい男はシビなんですけども(青青の)。

この作品の何が切ないかって、響子は社会に出てから何度か、自分を変えるチャンスがあったんですよ! 佐藤さんという「救済役」だっていた。なのに「理想の男性像からかけ離れてる」という理由で効果半減…。
他の作品だとこういう時、主人公はハッとなって、少しずつ変わっていくじゃないですか。この作品にはそれがない。珍しく救済失敗してるお話なんですね。もー。響子の男性観がおかしいからこういうことに。

ある日、響子の父が愛人宅で急死する。初めて見る父の愛人は、派手で下品で色っぽいおばちゃん。父が響子に「こうあってはいけない」と言い続けた女性そのものだった。
娘には勝手な理想像を押しつけ続けたくせに、自分が男として求めたのはその正反対のものだった…という強烈なオチで終わるのかと思いきや、傷心の響子は帰り道で変質者に襲われ、とうとう発狂します。山岸先生はいつも容赦ないです。

冒頭につながる最後のシーン…。フリッフリのドレスに身を包み、髪を金色に染め、「ぎえーっ」と奇声を発する響子の姿。あーあ。
最後の響子の「髪を金髪にする」ってのは、現代だとそうでもないけど、髪を染めるのがまだテレビの中の芸能人だけだった時代だということも考えて見ると響子がいかに向こうの世界に行っちゃったのかがわかりやすいです。

タイトルの「天人唐草」は、イヌフグリ(犬の睾丸の意)という花の名前を口にした響子が下ネタ嫌いの父に激怒されて以来その名前を封印し「天人唐草」という綺麗な呼び名の方を使うようになったというエピソードから。鬱。

そういえば、久世番子の被服マンガ『神は細部に宿るのよ』に
パーティードレスがさり気なく「天人唐草」な人が出てきて面白かったです。

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柿丸

柿丸
文化人類学的観点からマンガを研究したいただのマンガ好きです。データ収集が趣味。
ジャンプ歴10年でしたが2016.3に一旦卒業しました。
マンガの感想は基本的にネタバレです(どうせ古いマンガしか感想書かないので)。

【新刊追ってるマンガ】
アオイホノオ
おいピータン!!
大奥
カルバニア物語
きのう何食べた?
海月姫
たそがれたかこ
トクサツガガガ
ドリフターズ
ドロヘドロ
HUNTER×HUNTER
etc.

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